No. 410 リリイ・シュシュのすべて / 岩井俊二 著 を読みました。
雄一は、中学一年の夏休み後、仲のよかった同級生から突然イジメの標的にされる。彼は心の痛みをカリスマ的な存在である歌姫”リリイ・シュシュ”の世界で癒そうとする。そこだけが、自分の居場所であるかのように……。イジメ、万引き、援助交際……閉塞感に押しつぶされそうな日常と、そこから逃避してリリイ・シュシュのファンサイトに没頭する非日常の間で生きる十四歳。青春のダークサイドをリアルに描き出し、話題を呼んだ'01年公開作品のもとになった、ネット連載小説の文庫化。解説・重松 清カバーの背表紙を転記
の監督本人による原作。
全編をインターネット電子掲示板(BBS)への投稿記事で構成された異色の小説。
前半は、架空のミュージシャン、リリイ・シュシュの私設ファンサイトに集う人々の書き込みで構成されています。
美しく、のどかな田園地帯に住む中学生、蓮見雄一の物語。
日常的に恐喝やリンチを受ける彼は、それをリリイ・シュシュの音楽で癒そうとし、自ら立ち上げたファンサイトにのめり込んで行きます。
主人公の雄一や彼の同級生たちが生きる過酷な現実に心臓を突き刺されるような痛みを感じ、忘れていた中学時代の記憶が蘇りました。
親にも教師たちにも頼ることが出来ない絶望感、ひたすら卒業を待つしかない閉塞感。
彼らの物語には、教訓も、救いもありません。でも僕たちが、その過酷な十四歳を生き抜いた生き残りであることを教えてくれます。
僕は、文庫でこの小説を読みました。
岩井俊二作品は、文庫になるのを待たずに読むことにしているので、映画の公開に先立って書店にならんだ単行本(ロックウェルアイズ2001/08)を手に取った記憶があります。でも、ぱらぱらとめくって「なんだ、BBSの転載じゃん。」と、買わずに書店を出ました。
そう。この単行本が出版される前に、僕は、著者のオフィシャルサイトで企画された同名のサイトを見ています。2000年4月1日にオープンしたこのサイトは、小説と同じく架空のミュージシャン「リリイ・シュシュ」のオフィシャルファンサイトを装ったサイトで、いくつかのディスコグラフィーに加えて、BBSが設置されていました。
このとき、僕が岩井俊二監督の、この試みに気づき、リリイ・シュシュのファンを装ってBBSに参加していれば、今頃、もっとコアなファンとして、この物語を語れたのでしょうが、僕は、至って正直にこのサイトを見て「うむ。ミュージシャンのサイトだな。でも、僕は彼女の歌を聴いたことがない。余計な口出しをして、ファンの集まりを邪魔するのは避けよう。」と早々に退場してしまいました。
そして、一年後に、書店で単行本を見た時も「あぁ、あのときのBBSを一冊の本にまとめたのか。」と、それが、小説であることに気付かず、書店を去ってしまったのでした。
だから、映画を観た時には、驚いたのなんのって。最初に記したように、美しい田園風景の中で過酷な運命を生きる、中学生のリアルな心像が描かれた物語なのですもの。
そこで、この本の感想は説明的=「小説である」にしました。
文庫を買って、読んでいる途中、偶然CDショップで売っていた二枚組のDVD「リリイ・シュシュのすべて」特別版(ノーマンズ・ノーズ、日本ビクター発売2002/06/28)を見つけ購入しました。
この感想文は、ボーナストラックのミュージッククリップを聴きながら書いています。
本日は、仕事から終電で帰宅したと言うのに、遅くまで営業しているCDショップでサントラ(「リリイ・シュシュのすべて」オリジナル・サウンドトラック『アラベスク』東芝EMI2001/10/17)
を探して買ってきました。次は、オリジナル・アルバム「Lily Chou-Chou・呼吸」(東芝EMI 2001/10/17)
を探します。
リリイ・ホリック開設から四年近く経って、リリイ・ホリックになった、僕でございました。
2004年3月22日
ほんとは、amazonに感想文が掲載されるのを待ってこちらをアップロードしようと思っていたのですが(ボツか?(^_^;))BK1では、公開されたし、「Lily Chou-Chou・呼吸」はamazonで注文しちゃったし、今日は、この小説でヒロイン?が弾くドビュッシーのピアノ曲が掲載された楽譜を買い込んで、早速「月光」弾いてみたし、で、アップ・ロードすることにしました。
2004年 3月25日
No. 410
No. 410