受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 679 はじめての / 島本理生、辻村深月、宮部みゆき、森絵都共著 を読みました。

「はじめて」は、いつも痛くて、少し優しい
4人の直木賞作家が、
小説を音楽にするユニットYOASOBIとコラボレーション。
「はじめて」をモチーフに描かれた4つの物語。
現代エンターテインメントの最前線&最高峰!
これらの小説を原作としたYOASOBIの楽曲も配信リリース!
  帯を転記  
水鈴社
企画(推測)
によるアンソロジー
電子書籍で買って読みました。
最後の森 絵都「ヒカリノタネ」を読み終えた金曜日。帰路の通勤電車。
降りた最寄りの駅のプラットホームで、amazonレビューを書いて投稿しました。
愉快、愉快
プロ中のプロの作品は面白く、楽しく愉快だった\(^o^)/

偉い作家が書く小説は、きっと教訓に満ちており、説教臭いのだろうと警戒していたが違った。
プロと言うのは、サービス満点の仕事をするのだと知った。
小説万歳\(^o^)/じゃ
このレビューは、
全体を俯瞰していないし、
企画のYOASOBIの楽曲にも触れていないし、
最後の一遍の感想に偏っているんだけれど
「まぁいいか。」
とそのままにしています。
あらためて、四遍について簡単に記してみようと思います。
はじめて人を好きになったときに読む物語
島本理生「私だけの所有者」
人型ロボットが、異国に運ばれ、経過観察を受ける期間の往復書簡
大切な人に注ぐ善意と愛情。所有者の側からだけでなく、応えるロボット(というか、子供)の側からもにじみ出ていて、味わい深い読後感がありました。
別件で「二足歩行ロボット」の開発に従事する人が、逆に「人間の歩行の仕組み」の解明に役立つ。とテレビでみた覚えがあります。
この小説は、一種の思考実験として「人が愛情を注ぐ感情」の解明の一助になるのではないか。と思いました。
YOASOBIの曲は「ミスター」

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はじめて家出したときに読む物語
辻村深月「ユーレイ」
中学生ののどかは、お小遣いをはたいた全財産で切符を買った。電車から降り立った海沿いの町の路上。夜の出来事。
予想を裏切るどんでん返しが複数回やってくる凝った構成。
視野を広く持つことは大切だな。とは思うのですが、視野を広く持たなくちゃ。と思う機会がそもそも訪れない。(今の世界が充分広いと思っている)
そういうわけで、旅って人生に必要なのだな。と思ったですよ。
ていうか、学校生活に膿んだら、時々旅行するのが良いのでは? 家出でなくとも。
部活の試合などで他の学校に行ったり、他の学校の生徒と接する機会でも良いかも。案外世間を広げる良い機会になっていたな。と思い出しました。僕の場合は軟式テニス部でした。
YOASOBIの曲は「海のまにまに」

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はじめて容疑者になったときに読む物語
宮部みゆき「色違いのトランプ」
量子加速器の爆発で発生したカタストロフ。つながった第二境界側に高校生の夏穂が拘束された。
平穏無事で穏やかな人生を送るのと、危険で過激な戦いの人生を送るのと。二つの可能性を自分で考える事の効用があったように思います。
YOASOBIの曲は「セブンティーン」

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はじめて告白したときに読む物語
森 絵都「ヒカリノタネ」
幼馴染の椎太が好きでたまらない高校生の由舞は、四回目の告白を確かなものとするため、タイムトラベルで過去の告白を消し去ろうとするがーー。
面白かった。愉快です。小説って楽しい。って思いました。
YOASOBIの曲は「好きだ」

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もともとYOASOBIの「小説を音楽にするユニット」は、小説などの投稿サイト
に投稿された小説(など)を音楽にするユニットだ、と僕は認識していました。
YOASOBIの曲を聴いて、原作を読む。「文学的な歌詞だな」と感心して、原作を読んで「理解が深まった」と感じた感動は、それまで味わったことがない、新鮮な感動でした。
大きな言葉で、社会を論ずる人が多いネットの投稿や、そもそも大きな言葉で言うのが仕事だと思っているようなマスコミの報道に接していた僕にとって、現状を自らの環境として認識し、自らの処世を個人のレベルで考えたmonogataryの作品が新鮮でした。
マイ・ファーストYOASOBIは「アンコール」
原作は、水上下波「世界の終わりと、さよならのうた」
これは、終わる世界の善し悪しではなく、終わることが前提の世界でどう生きるか。だし、

 

マイ・セカンドYOASOBI「夜に駆ける」
理解しない運営(または理解しないファンではない大衆対策)が「次のコンテンツには、自殺や自傷行為のトピックが含まれている可能性があります。ご自身の責任において試聴してください。[理解した上で続行する]とか警告を出しているけれど
原作;星野舞夜「タナトスの誘惑」
を読むと、逆に「いくら就職活動がうまくいかなくても、ブラック企業に勤めてはダメ。死神に取り憑かれてしまうよ。」という警告になっていることが解ります。
ミュージックビデオに警告を出すのではなく、大人ならば、ブラック企業が若者を食い物にしている状況をどうにかしようとしなさいよ。と、若者から言われかねないです。
実際の世の中は、言葉通りの「働き方改革」を進めている企業も多いようです。なので、学生の皆さんは、がんばってまともな企業に就職してください。

 

マイ・サードYOASOBI「あの夢をなぞって」
原作は、いしき蒼太「夢の雫と星の花」
逆らえない運命を前提にしつつも、自分ができる事が何かを考え、やれることを全てやって、結果を待つ態度が清々しいです。
この小説は少しボリュームがあって、情景描写も感動的です。

 

つまり、僕にとっては、YOASOBIのプロジェクトは、トッププロではない、投稿による小説作品が、そのまま価値の根源になっていて、このしくみを作ったソニー・ミュージック・エンターテインメントの企画力の底力に恐れ入ったモノでした。
本作は、このプロジェクトを直木賞受賞作家という日本のトッププロでやったわけです。
「どんなふうになるのかな?」
興味が湧き、購入して読みました。
なるほど、企画に応えて、トッププロが書けば、読み応えがあって、エンターテイメントとして満足できる作品になるのだな。
と思いました。
2023年 1月15日
No. 679

みやべみゆき「色違いのトランプ」原作としたYOASOBIの曲「セブンティーン」が公開されました。YouTubeの楽曲を貼り直しました。

2023年 3月27日

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