受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 491 名前探しの放課後(下) /辻村深月著 を読みました。

名前探しの放課後(下) (講談社文庫)

名前探しの放課後(下) (講談社文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2010/09/15
  • メディア: 文庫
 

東京近県の江布市内県立高校一年生の依田いつかは、同級生の死を止められるのか。彼が記憶を持って戻ってきた三ヶ月後の事件を未然に防ぐべく、同級生に協力を求めて動き出す。上下二巻の下巻です。

下巻も引き続き、「こんな友だちが欲しいなぁ。」「坂崎あすなに信頼されるような人になりたいなぁ。」と高校生の視線で読みました。
僕が著者の作品に魅力を感じるのは、このような人間関係の描写なのですが、本書の場合には、意外にも(と、言うのは、僕はミステリーをとりたてて好んで読むわけではないからなのですが)「ミステリーって面白いなぁ。」と謎解きの仕組みを大いに楽しみました。
「これって、こいつが、こうしたから、こうなったんだよね。」と誰かと謎解きを確認したくなりました。
それと、偶然に物語りの章題になっている「星の王子さまサン=テグジュペリ作、三野博司訳、2005/6/30論想社)
星の王子さま (RONSO fantasy collection)

星の王子さま (RONSO fantasy collection)

 
を読んでいたり、あすなと椿が連弾で弾くピアノ曲を(映画のサントラから)携帯オーディオプレイヤーに入れて毎日聞き始めたところだったり、自分が物語りにリンクしていたのも楽しかったです。

 

それにしても、天木くんってすごいね。

2007年2月9日
No.491

追記
作中であすなと椿が連弾で演奏するのは、ドビュッシーアラベスク第1番です。
僕がこの本を読みながら聴いていたのは、岩井俊二監督の「リリィ・シュシュのすべて」
リリイ・シュシュのすべて 特別版 [DVD]

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  • 発売日: 2002/06/28
  • メディア: DVD
 
のオリジナル/サウンドトラック「アラベスク
から、牧野由依が弾くドビュッシーピアノ曲だけを抽出したもの。携帯オーディオで繰り返し聴いていたのでした。
今でも、時々聴いています。僕にとってドビュッシーと言えば、牧野由依が弾くドビュッシーです。

 

小説では二人に振り分けて弾いています。
僕が初めてドビュッシーを弾いた時に「弾いて」と持ちかけた人も、
「これ、二人で弾いているんじゃないの?」
と聞いて来た記憶がありました。
その時、
「なるほど、二人に振り分けるならハードル低いかも。」
と思ったのを、この小説で実行していたので、
「なるほど。」
と思いました。

 

その後、東北に旅行して、

www.koiwai.co.jp

でアイスクリームをなめていたら、同じ曲の合奏に接する機会がありました。
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2010年8月21日 玉川学園ハンドベルクワイア 東北公演 小岩井農場まきば園 特設ステージでの特別公演
なんと、幸運なことに玉川学園ハンドベル クワイアの特別公演を拝聴したのです。
指揮の先生が
「原曲のピアノ演奏は、一人で弾くのが難解な曲ですが、ハンドベルで、みんなで手分けして演奏するのも、たいへんです。」
と説明していたのを聴いた覚えがあります。
「なるほど。ピアノで二人に手分けすればハードルは下がるけれど、アルペジオを一音一音担当するベルの人が鳴らすのは、至難の業であろう。」
と思いました。
それを、玉川学園の生徒たちは、にこにこ微笑みながら演奏していました。
まるで一人が鍵盤をなぞるように、アルペジオを流れるように奏でるハンドベルに感激しました。
微笑みながらの演奏は、先生の方針で、玉川学園ハンドベル クワイアの流儀だそうです。気難しい顔をしながら演奏するのではなく、笑顔で演奏するのが流儀だそうです。
たびたび申し上げて忍びないですが「音楽」は「音を楽しむ」と書きます。ハンドベルを演奏する人も、たまたま小岩井農場まきば園に遊びに来ていた家族連れの人も、みなさんまさしく音楽を楽しんでいたと思います。
 
この小説では、物語の終盤でドビュッシーアラベスク一番を人に聴かせることを前提に、練習し、弾き聴かせる一方の主人公が描かれます。単純に一人で弾いて楽しむのとは異なる、音楽の特性がしみじみと感じられる印象深いシーンでした。
2016年7月18日

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