受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 421 冷たい校舎の時は止まる(上) / 辻村深月 著 を読みました。

このエントリーは上、中、下の三冊で刊行された新書版の上を読んでの記事です。

 

雪が降りしきる荒天の朝、私立青南学院高校に登校したのは深月を含め八人の生徒だけだった。
閉じ込められた校舎の中で、誰が八人を呼んだのか? 疑問の中で展開される物語。高校生の素顔を描いた長編ミステリー全三巻の第一冊。


謎を追うミステリーとしても、もちろん楽しめるのですが(上巻を読んだ時点で僕は「充か?」と思っているのですが……たぶん違うのでしょうが(^◇^;))仲の良い八人が「もしかしたら、わたしが呼んだのか?」と、普段の学校生活ではお互いには見せないそれぞれのプライベート=自分の事情を自省しながら展開される謎解きが魅力的です。

 

特に、僕には清水あやめの描き方が好きです。学園ものの登場人物というと「不良だけど人気者」とか「ガリ勉の嫌われ者」とか、類型的な描き方が気になる僕は、丁寧に描かれた清水の孤独と罪悪感に好感が持てました。
大人は、子どもに対し「勉強をしろ」と言うものらしいのですが、実際の大人は多くの友達と元気に遊んでいる子どもに安心するような気がします。では、静かに勉強をしてしまう子どもの立場は? 地味なキャラの清水ですが彼女の心理を丁寧にすくい取った物語である。と言うだけでも、この小説が好きです。

2004年 7月11日
No. 421

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