塚原マチは本好きで気弱な中学一年生。ある日、図書館で本をめくっていると一枚の便せんが落ちた。そこには『サクラチル』という文字が。いったい誰がこれを? やがて始まった顔の見えない相手との便せん越しの交流は、二人の距離を近づけていく。(「サクラ咲く」)
輝きに満ちた喜びや、声にならない叫びが織りなす青春のシーンをみずみずしく描き出す。表題作を含む三編の傑作集。カバーの背表紙を転記
満足。
「僕のために書かれた本だ。」
と読後に思える小説が(自分にとっての)最高の小説だと考えています。
そして、この短編集は、僕のために書かれてあると思いました。
「自分が正しいと思ったことをする。」
ウケの良さを考慮したり、リターンが期待できることではなくて、自分で考えて、やるべき事をやる。
案外できる事ではありません、が、やろうと思えば今の自分にもできるはず。
そう思いました。
三編の短編小説集。
二編は連載。毎号ずつ区切られていて、それぞれ章題が付いています。
大変読みやすく、物語の理解が容易です。読むのが苦労でないので、物語の世界に集中できます。
- 約束の場所、約束の時間 進研ゼミ『中二講座』2009/9号~2010/3号連載
- 若美谷中学二年三組。転校してきた菊池悠は陸上部の武宮朋彦の隣の席になった。
- ファンタジーの要素を含んだ友情の物語。と言うか、友情ってこういうことだろう?と問いかけてくる物語。主人公二人間に限らず、男女間、ライバル関係の同級生達との関係も含んで、信頼を基礎にした人間関係を描いています。
遊び友達や、大人なら飲み友達、愚痴友達とは違う本来の意味での友情を結べる相手がいる人がうらやましいです。僕にも何人かいますが。 - サクラ咲く 進研ゼミ『中一講座』2010、2011年度連載
- 若美谷中学一年五組。塚原マチはクラスメイトの光田琴穂から書記に推薦された。
- 塚原マチの光田琴穂に対する態度に見倣うべき点が多かったです。
- 僕は、安易に悪者のレッテルを貼って、断交することしか思い浮かびませんでしたが、 やりようによっては、仲間としてともに歩む未来を拓くこともできる。
- 安易に人を諦めないことの大切さを知りました。
- 世界で一番美しい宝石 小説宝石2011年7月号掲載
- 県立若美谷高校の二年生、武宮一平と生田リュウ、平野拓史の三人は映画同好会所属。
- 冒頭に記したとおり、力強いメッセージを受け取りました。
- 正義は、所詮特定の誰かの正義でしかないことが多い。正義のための戦いは、他の人にとっては単なる迷惑。
- ならば、正義のためではなく、自分の意思に従う方が潔い。そういうメッセージです。
- 主題ではありませんが、最近になって「小さな恋のメロディー」
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- を観ました。いまいち楽しみ方が理解出来ませんでしたが(トロッコを押していった先には「腹が減った。」と家に帰ってくるしかないじゃん?)なるほど、そういう見方があるのか。と高校生の映画同好会諸君に教えられました。
- 作中の小説「世界で一番美しい宝石」も見事に感じました。
- 「島はぼくらと」
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- でもすげー戯曲を書く高校生が出てくるけれど(考えてみれば辻村深月が書いているんだけれど)スポーツでなく、格闘でもなく、文筆分野のハイパー高校生が出てくる(つまり、ロールモデルを提示している)のも、辻村深月の小説の面白さだと思いました。
2020年11月15日
No. 651
No. 651