No. 612 青空と逃げる / 辻村深月 著 を読みました。
サブブログ(daniel-yangのブログ)に投稿した
を抜粋します。
母親(早苗)と小五の男子(力)の夏休みから翌年の春にかけての逃避行を綴った長篇小説です。
四箇所を巡ります。
家島では、同じく都会から引っ越してきた中学生のお姉さんと島を巡り、
別府では湯治に来ていたお祖父さんに温泉蒸しをごちそうになり、お母さんは砂湯の砂かけとして働きます。
仙台市では写真館を手伝います。
大都市圏の会社勤めの家に育ち、学校卒業後そのままサラリーマンとして過ごすと、地方の生活というモノが実感として解りません。
例えば自分が会社を辞めて地方で働くとしたらどうなるのか?
特技も無く、手に職も無く、今の月給を維持するにはしがみついても社畜であらねば。と思いがちです。
僕は五年前に高知県に転勤してくるまでは、そんなふうに思っていました。
この小説を読むと、別に会社を辞めても、それなりに一生を送ることができる、
と言うか、親のように学校を出たが最後同じ会社にしがみつく生き方と言うのは、選択肢の一つでしか無い。と理解出来ました。
小説自体はノワールの側面があります。それで親子が逃げているわけです。
でも、辻村深月が描く小説は、ハードボイルドではありません。
対極にある家族を大切にする親子を描きます。
行く先々で人情に触れ、助けられ、家族が再会を果たす物語になっています。
青空はどこまでもつながっている。例えば曇り空でも、雲の上には青空が広がっている。
太陽の坐る場所(文春文庫2011/6/10)
でのテーマ
太陽はどこにあっても明るい。
と共通する、人の世の善意を信じる力を思い出させる小説でした。
分断されつつあるこの世の中をつなぎ止めるのが辻村深月の小説なのだな。と思いました。
2018年 5月13日
No. 612
No. 612