受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 457 がんばっていきまっしょい / 敷村良子 著 を読みました。

がんばっていきまっしょい (幻冬舎文庫)

がんばっていきまっしょい (幻冬舎文庫)

 
進学校である松山東高校になんとか入学した悦子は、女子ボート部を設立し、初心者ばかりの仲間を集め、エネルギーをボートに注ぐ。「自分の居場所」を見つけ、張り切る悦子だったが、貧血と腰痛に見舞われ、大事な大会直前、ボートが漕げなくなってしまう。若さゆえの焦燥、挫折、淡い恋心……。「あの頃」を切ないまでに鮮烈に描く傑作青春小説。
  カバーの背表紙を転記  
進学校である松山東高校になんとか入学した篠村悦子。
1970年代後半の瀬戸内海を舞台に、女子ボート部を復活させた悦子の高校生活三年間を描き松山市主催第四回坊ちゃん文学賞大賞を受賞した表題作「がんばっていきまっしょい」と続編「イージー・オール」を収録した一冊。文庫の解説は斎藤美奈子

 

もちろん僕も、映画「がんばっていきまっしょい磯村一路監督1998年)をDVD
がんばっていきまっしょい [DVD]

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で見ていたので手に取った文庫です。
映画は、田中麗奈が演じる悦子と、原作とは異なるコーチ役「晶子」を演じた中嶋朋子のやりとりが面白かったのが印象的(特に僕も何回か遊びに行った道後温泉の二階で会った日)で、もちろんボートを中心に描かれているのですが、小説では、ボートだけに留まらず、悦子が成長し、親から巣立ってゆくまでが描かれているのが対照的でした。つまり、子供の独立心が印象的でした。

 

僕が今までに聞いた友人たちの「子供の頃」の話を思い出してみると、はっきり二つに分けることが出来ると思います。それは、兄弟と比較されている事を意識している子供と、比較されずにすくすくと育った子供です。比較されていることを意識すると、そこに競争心が芽生えます。勝ったのか、負けたのか、勝敗を意識します。例えば、「姉の方が美人でおしゃれ。」とか、「俺の方が偏差値の高い学校に受かった。」とか。しかし、兄弟との勝負に勝とうが、負けようが、生きていく上ではそれは小さな事。いずれ兄弟との勝負を捨て、自分自身の人生を歩まねばなりません。兄弟との勝負を見限り、独自路線を歩み始めると、それが親離れの時となります。
悦子はボートを切っ掛けにして、独自路線を歩み始め、姉とは別の苦労や挫折、友情や達成感を味わいます。
映像では若いスポーツ選手の躍動が鮮やかでしたが、小説は主人公悦子が巣立つまでの成長に打たれる物語でした。
2006年 8月23日
No. 457