No. 462 かわいい顔して…… / 酒井順子 著 を読みました。
渡る世間はエセ面ばかり。誰もがかぶるガラスの仮面。
子供のころは誰でも感情と表情が直結しているものですが、大人になったら感情をそのまま表情に出すわけにはいきません。時には本当の気持ちを表情によって隠したり、適当とされる表情を作ってみたり……。
そんな複雑怪奇な大人の面々を眺め、「なんでこの人は今、こんな表情をしているの?」「この顔の裏にはどんな気持ちがあるの?」と勝手に憶測し、表情に隠されたドラマと本音を鋭くえぐる、爆笑辛口顔面エッセイ!解説・林あまりカバーの背表紙を転記
1997年4月に同じく角川書店から刊行された単行本「面々草」
の改題文庫化。
自分の事で申し訳ないですけれど、新入社員時代に
「こんな馬鹿馬鹿しい仕事やってられねぇなぁ。」
と資料の整理をしていたときに、隣の課長さんに
「楊君はどんな仕事も楽しそうにやって偉いねぇ。」
と慰められて、
「違うんだけれどなぁ。」
と思ったことがあります。
自動車免許を取るために教習所に通っていたときの事ですが、学科講習で事故の例を話している講師に
「そんな顔して聞く話じゃありませんよ。」
と笑顔を指摘されたことがあります。
「そんなつもりで聞いていたつもりは無いのだけれどなぁ。」
と思いました。
人の表情を読む人が苦手な僕ですが、人の表情を読む人を避けては世間を渡れない事をようやく悟り始めた時に読んだ本が本書です。
I「見られたい人々」女子アナ顔 ビールかけられて喜ぶ
から
IV「演技する人々」聞き手顔 うなずきの真意
まで、様々なシチュエーションにおける、人の表情と心理の関係を考察した一冊です。
I「見られたい人々」ドライバー顔 高級外車内の自意識
で、男性と女性で乗っている自動車と表情、服装の一致/不一致を指摘した点が絶妙に感じました。
またIII「困惑する人々」乗客顔 自動改札でハマる人々
では、女テツ(たしか酒井順子さんの専門は鉄道による旅行)の著者が本領を発揮、と言うよりは、鉄道乗客としての自意識が高くて面白く感じました。
智に働けば角が立つ。情に掉させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。
べつに意地を通しているつもりは無いのに、角が立ち、住みにくく感じる世の中にうんざりしている僕にとって気づかされることが多い一冊でした。
2007年1月14日
No. 462
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