受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 619 真田三代 / 平山優 著 を読みました。

真田三代 幸綱・昌幸・信繁の史実に迫る (PHP新書)

真田三代 幸綱・昌幸・信繁の史実に迫る (PHP新書)

 
武田信玄に仕える一方で、長尾景虎とも誼を通じようとした真田幸綱。徳川氏の力を借りてまんまと上田城を手に入れた昌幸。滅亡しつつある組織特有の固陋さによって献策が受け入れられず、悲劇的な死を遂げた信繁……。
知謀と勇猛さで戦国時代を生き抜いた真田三代の本来の姿を、日本有数の戦国史研究家が丁寧に描く。近年の戦国・織豊研究のめざましい発展や、新資料の相次ぐ発見を踏まえた新たな決定版。虚飾を退けることで逆に新鮮な驚きと感動を呼び起こす。
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を転記します。

2016年のNHK大河ドラマ真田丸時代考証に名を連ねる平山優(1964~歴史学者の著作。
放映開始時に購入していたのですが、積ん読のまま、ようやく今読みました。
昨年(2017年)のNHK大河ドラマ「おんな城主直虎」で穴山信君(1541~1582。梅雪斎。甲斐源氏武田一族。信玄の甥)が「あなやまのぶただ」と呼ばれていたのが気になりましたが、本書ではこの読みの訂正の経緯が示されていて「歴史学の進歩は著しいのだな」と目から鱗が落ちた思いでした。
1988年のNHK大河ドラマ武田信玄」の続編であるところの「武田勝頼新田次郎著。新装版2009/9/5講談社文庫刊)
新装版 武田勝頼(一)陽の巻 (講談社文庫)
 
では「あなやまのぶきみ」とルビが振ってあったように記憶しています。
 
1988年の「武田信玄」放映中に山本勘助(1493~1561)が忍者ではなく、れっきとした足軽大将であることが判明しました。(墓が発見されました。)時代考証の上野晴朗(1923~2011郷土史家)が苦悩を披瀝しているムック「風林火山―信玄の戦いと武田二十四将歴史群像シリーズ 6:小向正司編集1988/4/1学習研究社
風林火山―信玄の戦いと武田二十四将 (歴史群像シリーズ 6)

風林火山―信玄の戦いと武田二十四将 (歴史群像シリーズ 6)

 
を読んで
「最近になっても、新しい発見とともに歴史は明らかになるのだな。」
と感慨深かった記憶があります。
さらに三十年を経て、
本書でも「真田家」にまつわる新事実が沢山読めて満足でした。
 
と、言うわけで、本書で扱う真田三代は、
真田幸隆ではなく、真田幸綱
真田昌幸はそのまま(笑)。
真田幸村真田信繁として記述されます。
 
それだけでなく、領国支配の経緯が詳しく面白く感じました。
特に上野(群馬県)での武田、真田の領地、拠点の確保にまつわる努力、苦労が鮮明になったように思います。
大河ドラマ真田丸」では、沼田城に居座って北条の大軍を相手に奮闘する真田幸綱の弟、矢沢頼綱(1518~1597)が後に豊臣秀吉(1537~1598)の惣無事令を無視して沼田城を増強したり、おもしろく描写されていましたが、本書ではそのようなコミカル(ユーモア)は抑えて、時代の流れと成り行きがわかりやすく示されていて良かったと思います。
武田家滅亡後、北条、徳川、上杉と頼る大名を次々と変えて「表裏卑怯のもの」と嫌われていたと思っていたのですが、
頼る先を変更するのも経緯が分かり納得できましたし「表裏卑怯」と言うのも必ずしも「危険人物なので注意しろ」と言う意味に留まらず、賛辞でもあることがわかり嬉しかったです。

武田/真田贔屓である僕にとっては必読の本でした。面白かったです。
2018年 6月13日
No. 619