受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 481 煩悩カフェ/ 酒井順子 著 を読みました。

煩悩カフェ (幻冬舎文庫)

煩悩カフェ (幻冬舎文庫)

 

「ボーイフレンドの手帖を盗み読みしたい」煩悩から、「他人を太らせたい」煩悩、「肉体を露出したい」煩悩などなど、数えてみたら30もの煩悩を綴ったエッセイ集です。

子供の頃から親や先生にしつけられた数々の倫理。学校や就職してからも「こういう事を言ってはいけないのだな。」と学んだ数々のマナー。
でも、これらが倫理であるからには、それに反する欲求があるわけです。その欲求を「煩悩」として数え、その煩悩が有ることを肯定し、その処し方を提案しているところに妙味を感じました。
距離感や、親密度合い、求めている付き合いの内容にもよると思うのですが「煩悩」を語れる友人って限られますよね。では、どんな事でも言える人を親友や、恋人に求めているのか、というと、そうでもないなぁ。と、この「煩悩」との付き合い方の難しさを改めて考えてしまいました。
本書第三章「変な人を見たときに『あの人って、変』って言いたくなる」煩悩が、僕には典型的な例として「言いたいけれど、言えない」「言いたいのは解るけれど、言って欲しくなかった」双方からの例が挙げられます。
恋人と街を歩いていたときに、前から歩いてくる人が「男なのか、女なのか」どちらか解らないときがありました。僕は「どっちだろう? わからないね。うふふ」と言いたくなる煩悩を感じ、しかしながら、恋人に「どっちだろう? わからないね。ふふふ。」と言われると嫌な感じがするだろうなぁ。と思った事がありました。これはストレスです。
言いたい煩悩、言ってしまう罪悪感。人が言っているのを聞く嫌悪感。語るに語れない諸々の感情を分析してくれて、ちょっとすっきりした読後感でした。

2007年9月4日
No.481

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