No. 597 かわいそうだね? / 綿矢りさ 著 を読みました。
求職中の元彼女・アキヨを居候させると言い出した恋人「隆大」
「おれがアキヨを助けるのをどうしても許せないのなら、申し訳ないけれど、おれは樹里恵と別れる」
と、申し渡されました。
表題作「かわいそうだね?」の冒頭の設定。
話はそれますが、専業主婦(無職)、子供無しの妻を残し単身赴任した人がいる、と噂に聴いた事があります。
アキヨがうまく隆大を篭絡し、結婚にこぎ着けば、隆大の稼ぎに頼って、働かずに食べていける生活を手に入れることができるでしょう。
シンディーローパーの初期のヒット曲
で、男の子は綺麗な恋人が出来たら、深窓の令嬢として世間から隔絶しようとする、と批判し「女の子は日の当たるところを歩いていたいのよ。」と歌っています。
僕が高校生の時に、同級生と一緒に聴いて「もっともだ。」と納得しました。
アキヨは、表面上は就職し自活することを目指しているように装っており、自分自身もそのつもりでいると思います。
僕の経験で言えば、こんな人がCyndi Lauperを聴いて「男の人って、保守的よね。」と平然と批判しています。
しかし、結果としてアキヨは、男の稼ぎに頼って、働かずに食べていける生活を目指していると思います。
僕は、自分が就職し、親の庇護を離れた時の喜びを思い起こすと、こんな人がいるとは想像だにしませんでした。
が、最近(冒頭に記した子供無し専業主婦の夫の単身赴任とかを聴くと)「こんな人もいる」とその実存に気がついた今日この頃です。
隆大がアキヨの術中にはまれば、人生を棒に振るかもしれません。あるいは子供を設ければそれなりの人生になるかもしれませんが。
恋人の樹里恵としては、恋人の為を思えば、アキヨをなんとかして排除してあげたいところです。
しかし、それはどうすれば可能なのか。
と言うようなことを考えながら読みました。
結論としては、隆大は不慮の事故で死んでしまった。と考えて諦めるのがベターです。
隆大は人生を棒に振るかもしれませんが、樹里恵は別の男を見つければ、棒に振らずに済みます。隆大と過ごした時間は無駄になるかもしれませんが、無駄にしたものに執着して、その後も無駄を続ける必要はありません。経済学で言うところのサンクコストの呪縛からは逃れるべきです。
男性としては、世の中にはこんな女もいる、と教訓になります。昔ほど離婚は面倒ではなくなったようですが、こんな女と結婚したら離婚するのは至難の業です。遠大な計画を立てて、自立心とプライドを持たせるところから始めなくてはなりません。愛情を感じない相手に子育てのようなことをする必要が生じます。大人を一人作るわけです。
併録の「亜美ちゃんは美人」も面白く拝読しました。
「友人を理解する」と言うことがどういうことか。
自分を理解してくれている友人がいると言うことの僥倖をあらためて感じました。
肉親に「理解者」を求めるのが難しい場合もある、と言うテーゼも得ました。
2017年 5月22日
No.597