No. 646 独ソ戦 絶滅戦争の惨禍 / 大木毅 著 を読みました。
「これは絶滅戦争なのだ」。ヒトラーがそう断言したとき、ドイツとソ連との血で血を洗う皆殺しの闘争が始まった。
想像を絶する独ソ戦の惨禍。軍事作戦の進行を追うだけでは、この戦いが顕在させた生き地獄を見過ごすことになるだろう。歴史修正主義の歪曲を正し、現代の野蛮とも呼ぶべき戦争の本質をえぐり出す。カバーを転記
独ソ戦(1941~1945)は、日本の戦争とは全然違う。
最近テレビで「日本も、ドイツのように永遠に反省しつづけるべき」と聞くことがありました。
むろん戦争はしないほうが良いし、
戦争をしたことを反省するのも良いことだと思います。
しかし、実際のことを知らずに、やみくもに「ドイツのように反省しろ」と言われても納得できません。
ちょうど良いタイミングでこの本が話題になっていたので、購入しました。
日本の戦争とは、全然違いました。
「ドイツのように反省しろ」と言っている人は「ドイツの戦争を知らない」と思いました。
読んで得るところが多かったです。
日本人が知っている戦争ではありません。と、僕が考えている日本人にとっての戦争は、戦って相手を屈服させるもの。目的は、有利な講和条約をむすぶことにあります。
ドイツの戦争は(極端に言うと)相手国の国民を皆殺しにするもの。皆殺しにして、住民がいなくなったところに、自国民が移住するためのもの。
日本では、これを戦争とは言いません。
なので、僕は今までホロコーストは戦争とは別のものと認識していました。
本書を読むと、ホロコーストも含めてドイツにとっては第二次世界大戦だったのだ。とわかりました。
現代でもナチス党員だったものが捕まれば死刑になるようです。当然だと思いました。
ドイツが、当時の戦争遂行者を否定し、国として永遠に反省し続けなければ、
ドイツ国民全体が「この世に存在する資格無し。」と言われかねないからです。
比喩的な意味ではなく「人間失格」とは独ソ戦を遂行した者のことだと思いました。
のどかな老人は「ヒトラーの時代のほうが、仕事もあったし、生活は楽で楽しかった。」と言うそうですが、それは、他の民族が今まで生活してきた蓄えを奪い、ドイツ民族に分け与えたからだったのでした。
本書は、思い込みや、国の立場を擁護する意味で語られてきた独ソ戦を、近年進んだ研究成果を紹介しながら、丁寧に事実を紹介し、独ソ戦がどんな戦争だったのかを読み解きます。
- 特に興味深かった点をいくつか挙げます。
- ヒトラーとドイツ軍の関係、ドイツ国民の戦争に対する態度
- ドイツがソ連を下せなかった、具体的な理由
- ソ連の勝因(少し前にフィンランドとの戦争を勉強し、やたら戦死者が多い印象でしたので、人海戦術なのか、と考えていました。しかし、人海戦術だけではドイツには勝てないはず)
- 戦争とホロコーストの関係。 以上の点は、本書で具体的に解説されています。
また、従来の便宜的な説明と、近年の研究が進んで理解が深まった点も解説されています。
良書というのは、こういう本だ、と思いました。
No. 646