受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 526 ふちなしのかがみ/辻村深月 著 を読みました。

ふちなしのかがみ (角川文庫)

ふちなしのかがみ (角川文庫)

  • 作者:辻村 深月
  • 発売日: 2012/06/22
  • メディア: 文庫
 

青春ミステリの気鋭、辻村深月が放つ、初の怪談。5編の短編集です。

踊り場の花子  この学校の「花子さん」は階段に出る。去年の夏休み、自由研究の宿題でさゆりは『若草南小学校の花子さん』の研究をした。  
花子さんが怖いです。悪いことは出来ないな。と思いました。もっともこんな悪いことをするつもりはありませんが。邪悪なのは誰か? が読者に対するミステリーになっています。
ブランコをこぐ足  倉崎みのり(小学五年生、十一歳)が校庭のブランコから落下して死亡した事件  
真相を理解したのはただ一人。真実の理解には、想像力が必要。という教訓も得られますが、その他の級友にはホラーとして記憶される恐怖でした。
おとうさん、したいがあるよ  県内の寒村に住む認知症を煩う祖母を両親と共に訪ねた大学生つつじを襲ったホラー  
途中から登場するつつじの元彼への想いが、恋愛小説の要素を持たせていて好感が持てました。しかし、僕だったら、こんな状況の親の実家には(有無を言わせず連れて行かれてしまう小学生ならまだしも)大学生になったら、もう御免被りたいです。
ふちなしのかがみ  親譲りの才能を発揮して、ジャズバーでのセッションをバイトにしている高校生「冬也」と、彼のクラスメイトと共にジャズバーに通う「香奈子」のものがたり  
相手を思いやる愛情が枯渇し、執着だけが残った人は、相手に対して大変不愉快な想いをさせます。と言うのは、僕の持論なのですが、それが狂気の域まで達するとホラーになるのですね。
八月の天変地異  小学五年生の夏。シンジは「自分がこんな目に遭ってるのは、全てキョウスケのせいだ」と恨んでいた。  
最後の一遍は、ホラーと言うよりはファンタジーです。
秘密基地を作って友達と遊んだ、僕の夏休みを思い出しました。
この一遍を読むまでは
「子供の頃は悩みなんて無くて良かったなぁ。」
という漠然とした記憶でしかなかったのですが、実際はそれなりに悩みがある中で、友達とかけずり回って遊んでいたことを思い出しました。
本作は、冒頭で引用した帯のうたい文句の通り、「さすが、青春ミステリの気鋭」とうなずける、ホラー(怪談)でありながら、ミステリの要素を盛り込んであり、大変凝ったお話になっています。
そこで、僕も、あまりネタばれしないように感想を書いたつもりなのですが、如何でしょうか。
それは、ここで僕から、読み終わった皆様にクイズを差し上げます。
本作のうち二編は(僕の理解では)リアリティー小説です。さて、どれがリアリティー小説でしょうか。
正解は、皆さんが読んだ通りです。

2009年8月17日
No.526

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