受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 485 星の王子さま / サン=テグジュペリ 著 を読みました。

星の王子さま (RONSO fantasy collection)

星の王子さま (RONSO fantasy collection)

 
サン=テグジュペリ(Antoine de Sant-Exupery(仏 1900~1944)第二次世界大戦中に亡命先のニューヨークで執筆した童話「Le Petit Prince(1943/4)
Le Petit Prince (French)

Le Petit Prince (French)

 
の新訳です。パイロットであるサン=テグジュペリはこの後戦線に復帰。偵察飛行へ出撃の後消息を絶ちました。おそら戦死です。ですから、この童話はサン=テグジュペリの遺作と言うことになります。
僕が読んだ新訳は、新国立劇場中劇場で2005年8月に上映されたTBSミュージカル(主演:宮崎あおいに合わせて出版されました。当時本書の解説本『「星の王子さま」の謎』(三野博司著・論想社)
『星の王子さま』の謎

『星の王子さま』の謎

 
を準備中だった訳者が新訳に取り組むことになった経緯は、本書の訳者あとがきに記されています。

 

物語は、執筆の六年前、当時話題になった著者の遭難時のエピソードとして描かれています。サン=テグジュペリサハラ砂漠に不時着し、奇跡的に生還しましたが、砂漠で過ごした期間に、星の王子さまと出会い、別れます。冒頭の献辞でしつこく言い訳しているように、本書は子供向けに書かれています。

 

僕は、子供向けの意味を、この童話の中にも書かれているように、単に「大人が有り難がらない」と言う程度の意味に受け取りました。
限られた登場人物(星の王子さま、不時着したパイロットの他は数名のみ)、限られた時間、限られた舞台(二人の経緯を振り返る他は、全てパイロットが飛行機を修理する十日間の砂漠での出来事)で分かり易く、主題(と僕が読んだ)「いちばん大切なものは目に見えない」が何なのか、を考えさせられている自分に気が付きました。
同時に「そうは言っても生活していく上では、勘定をしなくてはならないのだよ。」と言い訳をしている大人な自分に気づいて残念に感じた一冊でした。それならば、せめて子供には、大切なものを考えてもらいたい。大人になれば必要に迫られて忘れざるを得ない大切なものを子供のころに見つけて欲しいですね。

2008年1月5日
No.485