自分が誰なのか確認するために、まわりのすべてを数え続ける少年・ヒロキ。その笑顔は十歳にして一切の他者を拒絶していた!マコトは複雑に絡んだ誘拐事件に巻きこまれていくが…。池袋の街を疾走する若く、鋭く、危険な青春。爽快なリズム感あふれる新世代ストリートミステリー、絶好調第2弾!解説・北上次郎カバーの背表紙を転記
の続編。
- 妖精の庭
- 続編第一弾は、インターネットの中の妖精と、彼女につきまとうストーカー。
ストーカーのエスカレートする愛情表現(嫌がらせ)が生々しいけれど、そんなリアリティーよりも、妖精をスカウトした祥が意地を見せて、妖精を守るシーンが格好良いです。 - 少年計数機
- 西口公園でマコトが出会ったLD(学習障害;Learning Disorder)の少年ヒロキ。片時も手放さない計数機で、ありとあらゆる数を数える彼が何ものかに誘拐された。
事件を解決する、マコトとGボーイズの緻密で綿密な連携プレーが鮮やかに感じられました。 - 銀十字
- 池袋の街で発生した悪質な連続引ったくり事件。事件はもちろん、警察の仕事の範疇。それなのに、マコトに犯人捜しを依頼してきた老人二人。
老人二人は、いわゆる「楽隠居」=家族に囲まれて、比較的余裕のある定年後の余生を過ごす老人ではありません。彼らの精神はストリート。ストリートな老人二人の描写が楽しい一遍でした。特に、張り込みの二人に食事を差し入れしたマコトとのやりとりが印象的。社会的信用と言うのは、上品(または紳士的)であることが、普段の僕が考えている前提条件なのだけれども、もっと基本的な市民としてのプライドが存在することを思い出しました。 - 水のなかの目
- 果物屋の手伝いに加えて、コラム書きでもあるマコトが、長編を手がけようと取材を始めた事件は、四人の少年による女子高校生監禁致死事件。ヤクザからパーティー襲撃の犯人探しを依頼され、取材中は中途半端に終わるのだが……。
凝ったストーリーと、激しいアクションで読み応えがある書き下ろしでした。
「銀十字」のように解決できる事件もあれば、
「水のなかの目」のような結末を迎える事件もある。
本シリーズ「池袋ウェストゲートパーク」が正義を描くのでは無く、人の業を描いている正統的な小説であることを思い知りました。
2005年6月26日
No. 451