受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 579 指からわかる男の能力と病/竹内久美子著 を読みました。

「女は男の指を見る」新潮新書2010/4/20)
女は男の指を見る(新潮新書)

女は男の指を見る(新潮新書)

 

の続編。前著が、動物行動学の総括的な内容だったのに対し、本作は、世界的に流行の兆しを見せる指比研究(※1)(胎児の時に浴びる男性ホルモンの多寡の影響研究)に的を絞って、世界の最新研究成果を紹介しています。

(※1)指比:薬指の長さに対する人差し指の長さの比。
英語でディジット比(digit ratio)や2D:4D比(2D : 4D ratio ; second to fourth digit ratio)と検索すると、沢山出てきます。
例えば、序章で紹介されている力士での研究は、大竹文雄氏本人のブログでも、世界で大きく取り上げられた事が紹介されています。

大相撲の力士の人差し指と薬指の比率と昇進・成績: 大竹文雄のブログ

はじめに
韓国での指比研究の紹介で筆を起こしています。他には、イギリスでのトレーダーと年収の関係についての研究も。
つづいて、思春期女子の男の指への関心。そして、発生時の指と男自身の関係。本書では、最終的にこれらの遺伝情報が、将来注意すべき疾病や、個性の発揮しやすい性質も示唆することを述べています。
序章 ついに日本で始まった指比の研究
先に記した日本人(と韓国人一人)の力士での研究を紹介しています。
相関が見られる対戦成績と、関係が見られない昇進ランクなどがあるのを興味深く感じました。
第一章 男の能力と指比
スポーツ以外に軍隊での傾向、音楽の才能、ビジネスでの活躍など、多岐にわたる指比と能力との関係が研究されていることを紹介しています。
うぅむぅ。指比は小さい方が良いのかな。
第二章 男の隠れたあれこれ
男性の生殖能力と、男性を選ぶ女性の傾向について。
なるほど。モテるに越したことはないですが、この年(四十後半ですよ。)になると、モテれば良いというわけでもないと、僕はつくづく思うので「なるほどな。」と言うに留めることにします。
第三章 心の病と指比の悩ましい関係
本書の趣旨~指比から子供の可能性を知ることと、大人であれば気をつけることがわかる事を繰り返し述べた後、主に心の病との関係を研究した報告を紹介しています。
特にアガペルガー症候群と自閉症の研究には感じるところが多かったです。また、
第四章 指比でわかる身体の不調
心臓病などの一般的な病気や長生きかどうか、との指比の関係について述べています。
相撲取りがスポーツ選手の中では指比がさほど低くない傾向にあることと、成人病の関係が興味深かったです。
女性の乳ガン、卵巣ガンについても述べています。
第五章 女が男を狙うとき
女性が男性を選ぶときに、男性の何を見ているのか、また、体調により変化する好みについて述べた内容が面白かったです。特に、結婚相手として好ましいと思う男性像と、短期的な相手としての男性像の微妙な違いが面白いです。
最後は、あまり魅力と相関のない寿命について。ずいぶん前に、哺乳類一般の長寿の秘訣はカロリー控えめである、と何処かで読んだ覚えがあります。本書でも同様の内容が記されていますが、加えて身長と寿命についての記述が面白く感じられました。(身長が低いほど寿命が長い。)

本書は、冒頭に記したとおり、指比の最新研究成果を紹介しています。今までと違うところは、読者が短絡的に「指比が低いほどモテる。浮気するのも仕方がない。」「指比が低くないからモテない。俺の人生こんなもんだ。」と結論するのを微妙に阻止しているところです(笑)。著者と同じく理系の数学に親しんだ人なら、この手の統計から導き出される傾向が、個人レベルで見れば、重なり合った変異の範囲で、多少傾向に従うことがあっても、他の(指比以外の)後天的な影響が大きくて何とも言えない。と言う場合が往々にしてある。と理解しているものですが、お遊びで「あ、俺、モテる。寿命短いかも。」などと笑って済ませていました。ところが、本書では、指比が低いことのメリット、デメリット双方を紹介した上に、結末では、あまり指比が関係しない要素で女性の結婚相手に選ばれたり、長寿を誇る地域の特徴があることを示したり。僕も、自分の指比(日本人男性として平均的です。)よりも、普段の食生活に気をつけようと思いました。

2015年11月 6日
No. 579