恋愛にも大学生活にも退屈し、うつろな毎日を過ごしていたリョウ、二十歳。だが、バイト先のバーにあらわれた、会員制ボーイズクラブのオーナー・御堂静香から誘われ、とまどいながらも「娼夫」の仕事をはじめる。やがてリョウは、さまざまな女性のなかにひそむ、欲望の不思議に魅せられていく……。いくつものベッドで過ごした、ひと夏の光と影を鮮烈に描きだす、長編恋愛小説。
カバーの背表紙を転記
女性だけではなく、大学も友人も家族も、世のなかすべてつまらない、と嘯くリョウ。二十歳の物語。
タイトルの「娼年」に引き寄せられ、帯の「ぼくを、買ってください。」に従って買ってみました。(ただし、この小説のリョウが売る相手は、女性です。)
大学をさぼり、精を出すリョウのバイト先はバー。そこに客として来た御堂静香に誘われ高級男娼になります。
アブノーマルな手法を用いずに、優秀な仕事をするリョウのスマートさに感服しました。
性的なことは、あまり人に教わるものでは無いし、人と比べる機会も少ないので、ある程度の身勝手さは仕方がないものだ、と僕は思っています。(と、自分の感覚を語るのは恥ずかしいですが)まずは、自分の心地よいようにし、次第に相手に合わせられれば良いのではないかと思うのですが、(と言うのは、最低限のマナーとして、つまらなそうな顔をしていることこそ、相手を不愉快にするだろうし……僕はプロになれませんな(;^_^A) リョウは、徹頭徹尾お客を基準に、その欲求を満たそうとし、満たしてゆきます。天才的なプロフェッショナル。なるほど、売れっ子になるはずだし、対価を支払う客の購買意欲にも説得力があります。
背景として「リョウの生い立ちに何かありそうだ。」と気になる点や、御堂静香の事情などが物語を単なる官能小説に留めておかない効果があるように感じられてグッドです。リョウと同年代の女性二人の対立が、固定観念に縛られた常識人へのアイロニーになっていて痛快でした。
2005年 3月18日
No. 437