受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 500 スイートリトルライズ/江國香織著 を読みました。

スイートリトルライズ (幻冬舎文庫)

スイートリトルライズ (幻冬舎文庫)

 

テディベア作家の瑠璃子は今年三十歳。夫の岩本聡はサラリーマン、ふたつ年下の二十八歳。結婚三年目。

おそらく、二人はそれぞれマイペースなのだ、と僕は思う。
瑠璃子は、マイペースの聡に、一緒に生活していく事が出来るよう最低限の是正をお願いしているのだろう、と思う。
聡は、瑠璃子の要求に精一杯応えているつもりなのだろう、と思う。
瑠璃子の最低限と、聡の精一杯。これが、この夫婦の状態なのだなぁ。と思いました。
取り立てて言えば、聡の嘘に対する感慨と、第十章「嘘」で瑠璃子が語る嘘の意味の非対称性が、二人の関係を象徴しているように感じられます。

 

本当は、瑠璃子は、最低限ではない要求を提案出来れば良いと思うし、聡も自分から働きかけることが出来れば良いのにな。全てを一人の相手で充足できれば良いのにな。と思いますが、彼らはそれを偶然の出会いから、別の相手にそれを求めます。

 

この充足の経験を配偶者に伝える手法の取得として将来生かすことが出来れば、二人は表面的にごく普通の幸せを手にすることになるのかもしれません。その後の二人の行く末を見守りたい読後感でした。

2008年5月25日
No.500