受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 600 幸福論/ アラン著・村井章子訳 を読みました。

幸福論

幸福論

 
三大幸福論のひとつ。アラン(Alain)ことエミール=オーギュスト・シャルティエ(Émile-Auguste Chartier, 1868~1951仏)作。
以下、amazonに投稿したレビューを転記します。

 

漠然とした不安を感じているときや、人生を空しく感じたときに、アランの幸福論には大変勇気づけられるものがあります。
ですが、原作が出版されたのは大正十四年。
当時の教養のあるフランス人向けの本書を現代日本人が読むのには、注釈が必要です。
注釈をめくりながらの読書も楽しいですが、本文の中に修飾語として組み込まれていると(正確な訳とは言えないのかもしれませんが)だいぶ、読みやすくなります。
また、現代人は、村上春樹以来の主語一つに、熟語一つ。短く区切ったセンテンスの読みやすい文章に慣れています。
そこで、アランの幸福論の場合には、本書=村井章子訳がオススメです。
例えば、序章の「名馬ブケファロス」を引いて比べてみましょう。
本書=村井章子訳
恐怖のような強い情念は、その本当の原因を知らないとどうすることもできない。アリストテレスの教えを受けた若き大王は、そのことをすでに知っていたのだった。
一方、集英社文庫白井健三郎訳(1993/2/19)
幸福論 (集英社文庫)

幸福論 (集英社文庫)

 
は、次のようになっています。
こうしてアリストテレスの弟子は(3)、情念のほんとうの原因を知らないかぎり、わたしたちは情念にたいしてなんらの力ももたないということを、すでに知っていたのである。
です。(3)の注釈に、「アリストテレスの弟子」が、アレクサンダー大王を指していることが記されています。
おそらく、アランの原書を正確に訳すると、後者のようになるのだろうと思うのですが、
「読んで理解する」
と言う意味では、本書=村井章子訳が適していると思います。
「幸福論」を「読んだよ。」と自慢するために求めるのだとすれば、正確な逐語訳が良いと思います。
でも、「幸福論」を自分がよりよく生きるために求めるのであれば、読んで理解がしやすい、本書=村井章子訳がオススメです。
以上がamazonに投稿したレビューの転記です。

 

僕は、日経ビジネスオンライン連載時にだいぶ読んでいました。
本書は、主に「上機嫌でいよう。」とか「身体を動かすと気分が晴れる。」など、簡単に実践できる気分転換のたぐいが多いのですが、
僕は、特に28段「野心家に与える言葉」
に惹かれ、単行本になった本書を購入しました。
リードは
社会は、求めない者には何も与えない。そして「求める」とは、ずっと求め続けることである。
です。
本文中の
ひょっとすると取り立ててくれるかもしれない人にわざわざ耳の痛いことを言う人は、ほんとうは出世したかったなどと言ってはならない。
は、耳に痛かったです。
 
本書は、人に言うのではなく、自分が学習すべき内容が記されています。
読んで、感心したとして、人に「待ってちゃだめよ。自分で行動に起こさなきゃ。」と忠告するのではなく、自分が一歩を踏み出すための教訓です。
なるほど。時々読み返して、自分の怠惰を叱咤したい。と思いました。

 

本書出版時の訳者インタビューがありますので、ご参照ください。

wol.nikkeibp.co.jp

2017年 7月31日
No.600