受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 201 石油戦争 / 落合信彦 著 を読みました。

1979年、第二次石油危機を機に石油ビジネス従事時の経験を生かし、世界の石油業界と、産油国をレポートした一冊です。
この本が書かれた当時の「石油問題」は「環境のために」ではなくて「石油を枯渇させないために」でした。
本書では、当時の石油危機を、新聞や、雑誌を賑わしたこれら「インスタント・エキスパート」による意見とは別に、全世界の現状と、歴史、将来予測から、独自に分析しレポートしています。「石油問題(または、石油に代わる代替エネルギーの問題)とは、石油の枯渇や、供給不足ではなく、環境悪化に起因する問題であろう」と最終章で触れています。これ、レポートされたのは、今から二十年前です。またまた、本書でも、著者の鋭い視点を思い知らされます。
感情や世間の雰囲気に支配された「専門家の意見」が、いかに当てにならず、必要な事が冷静な状況の分析である事を、今更ながら思い知らされる一冊です。
結果として、現在の日本は石油に代わるエネルギー源に「原子力」を選んだのですが、これって廃棄物の毒性に目をつぶっても  つぶるワケにはイカナイと思うが  全く解決になっていないような気がします。いかがでしょうか。
また、石油と同じように国際関係が生活に多大な影響を及ぼす「商品」として、食料(特に家畜飼料)が挙げられると思います。いずれ起こるであろう、食料危機の際は、これらの教訓が役立たされることを切に願うものです。(ん? この二つの問題は、僕が学んだ高校の授業でも取り上げられたものだった!! いい高校で学んだ事を思うと、今更ながら先生に感謝です。ちなみに、僕が学んだ高校とは「ケンソー」と言う、なんだか、賑やかそうなニックネームの高校でした。)

 

石油が発見されてから、石油危機までの歴史を解説した第二章「石油100年の人間ドラマ」も面白かったです。学校で習う歴史に比べ、遥かに具体的であり、客観的です。セブン・シスターズと呼ばれた七大石油資本と産油国の駆け引きなどの描写からは「学校の授業」と言う性質上、決して得られない「当事者の思惑と、選択」が学べます。

 

ところで、二酸化炭素をネタに、一筆。
地球の大気成分は、大気に溶けている水を除くと「窒素」=>「酸素」の順であることは、有名ですよね。中学校の理科で「窒素80%、酸素20%として計算をすれば、おおよそ空気の密度になります。」と教えられた通り、現在の地球大気に含まれる二酸化炭素の量は少ないのです。
が、意外なことに、大昔、生物が誕生した頃の地球と言うのは、金星と同じように二酸化炭素が主成分で、二番目が窒素だったことは御存知ですか? (記憶に頼って書いているので間違ってたらゴメンナサイ。& ここでも、大気に溶けている水分は考慮してません。)地球上に光合成細菌が誕生した時には、二酸化炭素が、それこそ無尽蔵に存在したから、光合成の原料に二酸化炭素と水を選んだのですね。
そして、数十億年間。無節操なこの細菌(と、進化した緑色植物)は二酸化炭素を、ほとんど、枯渇するまで消費し、地球大気を改造しました。結果として成分第一位の座は「窒素」となり、廃棄物である「酸素」が、第二成分になりました。二酸化炭素の大気中濃度を単純計算すると、生物が誕生した当時の1%も残っていないのです。
2023/1/15訂正:二酸化炭素量は、地球の古代大気が安定した後、指数関数的に単純に減少の一途を辿っており、それは、生物の活動ではなく、海やマグマによる吸収でした。国立研究開発法人 国立環境研究所の下記ページを参考にしてお勉強しなおしました。ゴメンナサイ。

tenbou.nies.go.jp

 

こんな話しを、友人としていたとき
「じゃぁ、石油をボウボウ燃やして二酸化炭素を増やす事って、地球を昔の姿に帰してやることなんですね。」
と友人が言った。
「地球のため」と言われる「環境問題」とは、まさに「人間のため」であることを思い起こされるエピソードでした。(まさか「地球環境を守ろう」と言う人が、太古の昔、金星と同じような大気に戻そう。と言っているわけじゃ、ありませんよね。人間どころか、現在のほとんどの生物が居なくなっちゃいます。)

 

蛇足ついでにもう一筆。
上記のように、昨今騒がれている二酸化炭素の増加は、人類を無視すれば  無視できないと思うけど  これと言って地球が困ることではありません。
それに、この程度の二酸化炭素の増加は、海が吸収します。二酸化炭素は水に溶けて、炭酸水になります。中学校の理科で習いましたね。さらに、高校で化学を勉強した人なら、水に接している空気中の二酸化炭素が増えれば、水に溶ける二酸化炭素の量が増えることも御存知ですね。
「受験終わって暇だなぁ。」と思っている理系のあなた。僕が問題を差し上げよう。
二酸化炭素の水への溶解度は、20C、1気圧で0.88[cm3](1cm3に溶ける0C、1気圧の時の気体容積)です。海の体積を1370×106[km3]、大気の量を5.3×1021[g]、現在の大気中二酸化炭素濃度、0.032%(体積百分率)で海水中二酸化炭素も飽和していると仮定し、現在の大気中二酸化炭素と同じ量の二酸化炭素が排出された場合、海への溶解が平衡状態に達した後の、大気中二酸化炭素濃度と、海水中に新たに溶ける二酸化炭素の量を答えなさい。ただし、大気を理想気体、大気のモル平均分子量は28.8、二酸化炭素の分子量は44、溶解度は、海の濃度に依存しない事とする。(「理科年表1991」(国立天文台編、丸善株式会社発行)から数値を引用しました。あぁ、古い。)
ほうら、まだ、まだ、全然余裕で溶けるじゃありませんか。(ちなみに、僕は計算していない。ゴメン。実際に計算された方、間違ってたら指摘して下さい。)
問題なのは、溶解速度なのです。今の速度で二酸化炭素が増加すると、海に溶けるスピードを上回って、大気中の二酸化炭素濃度は上昇する一方なのだそうです。
フーム。南極の氷が溶ける日は何時の事になるのやら。ところで、氷河期に入ったら、二酸化炭素増加による温室効果との関係はどうなるのかしら。案外「あぁ、氷河期に入ったけど、増加した二酸化炭素のお陰で、寒くならずにすむわぁ。」って事にはならないですかね。
いい加減、無責任な発言は止めよう。寒いのが嫌いなだにぃでした。
1999年 2月21日
No. 201