No. 391 竹取物語 / 星新一 著 を読みました。
『竹取物語』の大筋についてはほとんどの日本人が知っている。それほどポピュラーなこの物語が、世界で最も古い「SF」なのではないかといわれている。アポロ宇宙船が月に到達して、人類が初めて地球以外の地に立ったのは、ついこの前のことだ。それよりも、何と1000年以上も前の日本に、月からやって来た美しい人がいたという発想にはあらためて驚かされる。SF界の第一人者が、わかり易い文章で、忠実に「古典」の現代語訳にいどんだ名訳! 章の終わりごとに書き加えられた訳者の”ちょっと、ひと息”が、この物語の味わいを、いっそう引きたてている。カバーの袖を転記
そして、この一冊は、親しみやすさ抜群の星新一による口語訳。
原著と同じ九つの章立てそれぞれの区切りに「ひと息」。解説を交えた、軽快なエッセイも親切です。
(※)改版(2008/7/25)で原文の掲載はなくなったらしいです。
同じ角川文庫で原文付きなら、こちらが良いかしら。
僕は原文を高校か中学の教科書で読んだ記憶があります。どんな授業が正しいのか、僕には解りませんが、この物語を取り上げた先生の授業を面白く感じたことは覚えています。それは、授業らしく言葉の解説であったり、人物の心理描写や、挙動の解釈でした。
僕が一番面白く感じたのは、四、蓬莱の玉の枝。
1987年版には掲載されている原文を読んで、記憶に残っていた内容が正確だったことに驚きです。
僕は国語の勉強が嫌いで、赤点の追試もまたもや落第点でした。
「しかたねぇ。卒業させてやるよ。」
嘆き悲しむ先生の一言。今でも僕の胸は痛みます。「先生、申し訳なかった。」
しかしながら、原文の記憶も正確だったことを考えると、僕は趣味としての読書を楽しむべく、授業をよく聴いていたことがうかがい知れます。
今でも、剛毅な男がお食事会などで「何でも好きなものを言ってくれ」と大風呂敷を敷いたら、
僕はすかさず
なんぞと、通じにくい冗談m(v_v)mを口にします。
ウミツバメの子安貝は食べ物ではないし……(^_^;)
これも竹取物語からの引用です。
試験で点数とれなくても、ティーンエイジャーのころから物語には親しんでいた自分を再発見しました。
本書、星新一口語訳は余計な解釈などを付け加えず、原文を尊重しているので、おもむきもそのまま。
蓬莱の玉の枝を持ち帰った庫持の皇子を歓待するおじいさん、こころ沈むかぐや姫。
さらに、かぐや姫に求婚するプレイボーイ達の粋な様子を詳解しており、求婚される女性の側もその粋を承知した上での対応=受け入れるにしろ、退けるにしろ、その男女の機微が楽しめました。
彼女を求めた伊達男たちのそれぞれの結末も、ドラマチックでよろしいではありませんか。
余計な現代ふうアレンジのない、原作者の意図を丁寧に掬った口語訳です。読者を楽しませよう、というエンターテインメント本来の味わいが新鮮でした。
2003年 5月28日
加筆修正:2022年 8月18日
No. 391
加筆修正:2022年 8月18日
No. 391