受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 414 音楽の海岸 / 村上龍 著 を読みました。

音楽が、どこら辺で始まったか、知ってるか?
音楽を嫌いつつも、言葉で女を癒し、かつ彼女たちを金持ちの男に提供して暮らしているケンジ。彼が客の一人から持ち込まれたオプションを引き受け、成し遂げるまでの物語。
 
舞台は日本国内の数カ所。ほとんど室内に限られていて、登場人物もほとんどは個人で仕事をしている人です。それでいて壮大なスケールが感じられた一冊でした。
それは、たぶん彼が仕事に用いる技量の深さが、対人関係能力と言う誰にでも必要とされるもので、その傑出が、僕にわかりやすく感じられたのだと思います。
特にユリに不可解な仕事への協力を納得させる彼の自分の能力に対する述懐は、読者の僕も、「僕にはとても無理。」と即座に恐れ入ってしまうものでした。
 
ラストでは、仕事に疲れた彼が癒されているように感じました。癒されるケンジにとって音楽の不在が意味することとは何か。僕にも不必要なのか。どうなのでしょうか。
2004年 4月24日
No. 414