No. 427 ダンス・ダンス・ダンス(下) / 村上春樹 著 を読みました。
下巻は、湘南、ユキの父親を訪ねたシーンから。
主題とは別に、僕はこの小説に、二つの感想があります。
一つは、主人公の「僕」にとって子ども(法律用語を用いるなら卑属)と言える年代の少女が登場したことについて。
子どもはユキ。主人公にとって異性であり、しかも性の対象ではありません。「僕」がまともなオトナであると言う印象を持ちます。
特に印象に残るのは、彼女に性欲を説明するハワイのビーチでのシーン。印象的なシーンでした。
思春期の子どもに対して、親として、肉親以外の大人として、それぞれが持つ責任のようなものが語られているように感じました。
もう一つは、主人公の職業が羨ましいと言うことです。
僕は もちろん自分が望んだことなのですけれども サラリーマンとして、基本的には年金がもらえるまで(あるいは、死ぬまでの貯金が貯まるまで、またあるいは高額の宝くじに当たるまで)働き続けることを前提として働いています。工夫や努力をすれば、途中中断することが出来るのかも知れませんが、そんな工夫や努力が面倒なので、基本的には、働き続けることを前提に過ごしています。
この小説の主人公は、貯金が底をつくまでの時間を見計らって、仕事を中断し、この小説の期間冒険をしているわけです。それは、うらやむべき事では無いのかも知れませんが、十数年ぶりに、この小説を読み返して、僕がしたことは「宝くじを買う」事でした。なんだか、小市民的な感想で申し訳ございません。
そして、主題について。もちろん、僕が読み取った内容としての主題なのですが、
「去る者は去り、来るべきものが来る。」
と言うことです。抽象的ですね(;^_^A 感想として書くのは難しいです。つまり……ようやく主人公の年齢を過ぎた僕が、十数年ぶりにこの本を読んで思ったのは、過去を過去として清算し、来るべき者を迎える態度は、要は今を大切にすることなのだ。という風に受け取った事です。
僕は二十代前半で当時出版されていた村上春樹作品を全部読んでいたのですが、十年以上経って読み返すと、当時解らなかったことがようやく解ったと言う感覚を持ちます。
さらに十年以上経った時、また違う感想を持つのでしょうか。または、そのころの僕は、もう小説を読まなくなっているのでしょうか。
この作品の終盤で、「人が人を求める」と言うことが描かれていますが、今、この小説を読み返して気づくのは、僕が小説を求めていると言うことでした。
No. 427