No. 428 フューチャー・イズ・ワイルド / ドゥーガル・ディクソン&ジョン・アダムス 著 を読みました。
現代から、500万年後、一億年後、二億年後の地球を予測し、そこに住む生物をコンピューターグラフィックを駆使して描写した一冊。
進化論の概要は知っている。遺伝と突然変異と自然淘汰。そして、それはたぶん正しい。僕たちが今の形で地球上に生きているのも、この説明の通りなのだろう。
だけれども、釈然としない。いっそのこと「神がお作りになった。」と言ってもらった方が納得しやすいような気がする。
それは、なぜか? 我々が認識できる(納得しやすい)タイムスケールがせいぜい自分の人生=百年単位、または歴史=一万年程度の変化であり、生物進化の単位である数百万年~数億年が我々の理解能力を超えているからだ。と説明したのは、リチャード・ドーキンスの第三主著「ブラインド・ウォッチメイカー」(※)(1993/10/15早川書房、日高敏隆監修訳)
つまり、そこには「時の壁」がある。と言うことでしょうか。
この一冊は、コンピューターを駆使した映像化で僕たちが「時の壁」を飛び越える事を容易にします。
僕は、「進化論の理解」という意味で、この本を大変楽しく読みました。
最初の500万年後の世界描写が、北ヨーロッパ、地中海、南北アメリカ大陸の四つを選んでいるところに「欧米人向けだな。」と少々残念に思うところもありましたが、まさか「日本海の未来を描写して欲しい。」と望んでも、それは僕の身勝手。それよりも、キリスト教文化圏(想像主である神が好き。と言う偏見が僕にはある>キリスト教文化圏)でも、こんな本が作られるのだから、安心だ。と、胸をなで下ろすことにしました。
進化を理解する上でのポイントも、ツボをついているように思われます。
地球環境は長いタイムスケールでは大きく変化すること、
大きな環境変化に強いのは、ゼネラリスト(極端に特殊化していない生物)であること、
生物の多様化は、ニッチ(すき間)を埋める形をとること。
など、これらは、進化を理解する上でのキーポイントであり、繰り返し描写されることで、僕の理解を補強しました。
なぜ今、人間のように大きな昆虫がいないのか。などの説明も面白かったです。
霊長類は、ほ乳類の中で、特殊化していない事が特徴であるから、もっと生き延びても良いのに。と反論したくなるのは、霊長類である、僕の欲目でしょうか。
そうです。この本で一番衝撃的だったのは、たとえ人間がいなくなったとしても、生物は進化を続け、地球上には生命があふれているだろうと言うことでした。
松井孝典監修、土屋晶子訳
2004年8月15日
No.428
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