No. 655 朝が来る / 辻村深月 著 を読みました。
長く辛い不妊治療の末、特別養子縁組という手段を選んだ栗原清和・佐都子夫婦は民間団体の仲介で男子を授かる。朝斗と名づけた我が子はやがて幼稚園に通うまでに成長し、家族は平穏な日々を過ごしていた。そんなある日、夫婦のもとに電話が。それは、息子となった朝斗を「返してほしい」というものだった。。解説・河瀬直美カバーの背表紙を転記
特別養子縁組で子どもを迎えた栗原清和、佐都子夫婦と、子どもを手放した片倉ひかりの物語。
内容盛り沢山。
最初は幼稚園で子ども同士のトラブル(片方怪我)。親の対応。
次は(少し遡って)結果の出ない不妊治療を諦めるまで。
舞台を変えて中学生の妊娠と、診断時に22週を過ぎ出産を選ぶまでの経緯。
出産と、特別養子縁組が成立するまで。
しかし、これらのあらすじは表面的でした。
物語は後半、片山ひかりが反社会的勢力の食い物にされつつ、、
この物語で僕が最初に受け取ったメッセージは、
「ご近所とのトラブルは、気苦労になり、ストレスである。」
だが、それは相手を「悪」と決めつけるほどのものではない。
ほんとうの悪とは何か。見せつけられた思いです。
そして(結果として)悪がはびこる手助けをしているのは、善良そうな顔をした大人なのだ。ひかりを受けれた職場は、反社の草刈り場だった。
では、悪の手先にならず、困っている人を助けるにはどうすれば良いのだろうか。
と考えてしまう読書でした。
社会生活を送る上では、おそらく普通の人として認識され、本人も自分がスーパーマンであることは意識しないだろう、と思います。
愉快な人生を過ごすためには、健康を維持する体力が必用だ、と思っていたけれど、この小説を読んで、精神的なタフさ、頑強さも大切だな、と思いました。
2021年 6月19日
No. 655
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