No. 654 悪のいきもの図鑑 / 竹内久美子 著 を読みました。
おもしろかった。
第1章「実はキビしい!社会の掟」
第2章「おかしな性行動」
第3章「悪魔の卵・生存競争」
第4章「恐怖の操りと寄生」
各章ごとに8~21の話題を各々数ページで紹介していて、気軽に読めて楽しいです。豊富なイラストはもじゃクッキーが描いています。
著者の著作はあらかた読んでいるし、リチャードドーキンスの初期の主著も「祖先の物語」
まで読んで、たいがいの話題は「知ってるはず」と思っていましたが、最新研究成果も盛り込んだ本書で、僕にとって「初耳」もありました。
例えば、ハダカデバネズミの長寿命(第1章の「恭順のポーズ」と糞尿で部下を従わせる)小さい動物ほど鼓動が早く、鼓動に比例して寿命がだいたい決まる。というのが定説だと認識していましたが、そうではなかった。
三つの婚姻形態が循環しながら永続性を維持している社会があるカエル(第2章の「ジャンケン戦略でメスを奪い合う」)
シマウマのシマシマが何の役に立っているのかが判った(第4章の「恐怖の吸血バエをさけるシマを持つ)
など。
豊富な話題で、生物の競争社会が理解できる内容になっていると思います。
世知辛い人の世も、野生生物の社会も、どちらもキビしいのだな、と思いました。
逆に人の世に生きていると、時々人を丁寧に対等な関係として扱ってる大人や、全体最適を考えて交渉の場でも共通の利益を模索する議論をする人と一緒に仕事をすることがあり、タイヘン気持ちが良いのが人の社会に生きているメリットだ、と思い直しました。
ちなみに、リチャード・ドーキンスの場合は「だから、教育が大切なのだ。」と人間に限らず厳しい競争社会が観察される野生動物の生態を紹介してコメントしていたのが記憶にあります。
また、残酷な寄生生物の生態については「残酷なのではなく、無関心なのだろう。」と、なるべく死なない部位から食べていく幼虫などの生態を考察していたのもなるほど、と思いました。
教訓を読み取る、と言うよりは、固定観念や、自分の倫理観に囚われずに、観察し、その目的(何が、どう適応的なのか)を考える訓練になったように思います。
No. 654