受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 434 コスメティック / 林真理子 著 を読みました。

コスメティック(小学館文庫)

コスメティック(小学館文庫)

  • 作者:林 真理子
  • 発売日: 2002/10/04
  • メディア: 文庫
 
「私はもう一回這い上がることができるんだろうか」バブル後のキャリア女性を取り巻く現実に直面し、打ちひしがれる主人公沙美だが、それでもあきらめられない。
「仕事でも恋でも百パーセント幸福になってみせる」そこから30代キャリアとしての沙美の”戦い”が始まった。
化粧品業界を舞台に繰り広げられる”女たちの闘い”は圧倒的なリアリティを持って描かれ、単行本発行時には「これは暴露小説では?」と美容業界を騒然とさせた。
キャリア女性たちの恋と仕事、夢と本音と現実を浮き彫りにしたベストセラー小説、待望の文庫化です。
  カバーの背表紙を転記  

広告代理店でAEを勤める北村沙美。
バブル入社十年目。冴えない景気に、冴えない会社。冴えない沙美を肯定してしまう恋人は銀行マン。
ここで、自分の現状を肯定したら、二度と這い上がることは出来ない。
転職を決意した北村沙美を待ち受けていた、アクティブな運命を描いた長編小説です。

「派手な仕事だなぁ。」
沙美の転職先=化粧品会社のPR担当の仕事振りについて、僕の感想です。
「地味な仕事だって良いではないか。」
と考える僕は、沙美の彼=斉藤直樹と同類なのでしょう。彼と僕が違うところは、女性だから「仕事に華が無くても良い。」と考えているのではなく、男にとっても、女にとっても、仕事の華は、勤め続けるための必須条件では無い。と主張したいのですが……。
「仕事の向き不向きは、個人の性質によるよね。」
いろんな職種を経験した僕の仕事に対する感想。(ちなみに僕は、フラスコを振るような基礎研究部門から、デーパートで仮面インタビューするようなマーケティングの部門まで、いろんな部署で仕事しました。)
沙美の場合、転職は天職。まさに、派手な仕事が性に合っていた。と断言出来る転職でした。
新しい職場で奮闘する様子は、勝ち組の人生を具体的に示しています。
何を以て「勝ち」とするか、「負け」とするかは、個人の好き勝手ですが、少なくとも、彼女は魅力的です。三十路を過ぎ、独身、子供無しの彼女が「勝ち」である様を示したところに、この小説の大きな価値があるように思います。
「こんなはずじゃなかった。」と愚痴をこぼしながら現状に甘んじるのではなく、「自分が決めたことだ」と、主体的に張り切る人は、例えば彼女がキャリアであろうと、主婦であろうと、生き生きして見える。と言うだ、と思いました。

2005年 3月 5日
No. 434