受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 644 忍びの滋賀 いつも京都の日陰で / 姫野カオルコ 著 を読みました。

忍びの滋賀: いつも京都の日陰で (小学館新書)

忍びの滋賀: いつも京都の日陰で (小学館新書)

 
滋賀県は琵琶湖がある県です。
琵琶湖は大きいです。
では、琵琶湖を除いた滋賀県の陸地面積は、何割?

 

滋賀県出身の著者が、
滋賀県は全国的に知名度が低い」
をネタに、
知名度が低いことによるハプニングや、
滋賀県の魅力を紹介し、
同じように大都会を持たない県の政策までを一緒に考える
エッセイ集です。

 

半ばまで読んで帰省しました。出発時点で下記のように感じました。
1. 滋賀県出身者以外にわかりやすいように、工夫して書かれている親切なエッセイです。
プレゼン上手な人や、言葉が巧みな人は、往々にしてアピールすることに熱中して「聞いている人がどう理解するか?」を忘れがちです。
権威ある人や、会社で偉くなった人のお話は(さすがに話は上手いのですが)「納得はできない」と感じることが度々あります。
しかし、このエッセイでは違います。
(べつに、著者が偉くないと言っているわけではありませんが。)
例えば、関西の昆布出汁、関東の鰹出汁の違いを説明する
第2章「ボーノ滋賀」無名だけどおいしい郷土料理「うどんと蕎麦」
では、
度々耳にする、関西の人が言う「うどんのつゆが黒い」を、
関東の人が「聞き飽きた。うんざりだ」と感じていることを前提に、
関西の人の好みと、滋賀県の食の魅力を説明しています。
「なるほど。」
と、素直に読み進むことができました。
2. このあと、僕も帰省するのですが、
要介護の親がいる故郷へ帰郷の気分が、
このエッセイで記されている、かつて著者が頻繁に滋賀県に戻る時の気分と一致していて「なるほどなぁ」と思いました。
僕にとっても、就職するまで住んでいた故郷(神奈川県相模原市)は、昔のまま。しかし、住んでいる人にとっては、徐々に変化しながら、現代に続いています。
Jリーグが公式試合をするスタジアムができていたりして「へー」と思う広い公園の展望台から飽きずに眺めた夕陽は昔のままです。

 

続きは、帰省先で、おしるこを食べながらゆっくり読みます。
ちなみに、
むろん僕は、滋賀県の8割以上が陸地だと知っています。(※1)
(※1)滋賀県の面積は、4,017km2
琵琶湖の面積は、670km2
滋賀県のホームページで調べました。
琵琶湖を除いた滋賀県の(陸地)面積は、3,247km2
3,347÷4,017=0.8332 83%が陸地です。
歴史好きなら浅井長政([あざい・ながまさ]1545~1573 北近江の戦国大名小谷城(現滋賀県長浜市湖北町井部)があることはご存じだろうし、
古くは元祖婆娑羅大名の佐々木判官(佐々木高氏[ささき・たかうじ]法名:道誉[どうよ]1296~1373 宇多源氏。近江を含む五ヵ国の守護大名
近江源氏は二つに分裂して、傍流の京極氏が北近江を、嫡流の六角氏が南近江を治めていたこともご存じのはず。
もっと古くは聖武天皇(701~756、第四十五代天皇。在位724~749)の三都計画の一つ紫香楽宮(現滋賀県甲賀市
現代はハイテク産業も盛ん(僕の旧友が滋賀県の会社に就職し、電子顕微鏡オペをやっていました。)
全部滋賀県です。
ここまでは2019年12月28日

 

帰省から帰宅し、読み終えました。
タイトルの「忍びの……」は、甲賀忍者「猿飛佐助」ゆかりの甲賀[こうか]滋賀県だから、だと思います。
甲賀郡は、現在の甲賀市湖南市蒲生郡日野町大字下駒月。滋賀県の旧12郡で唯一、琵琶湖に接しない郡だそうです。
新名神高速道路甲賀を通っています。信楽インターチェンジ甲賀土山インターチェンジのあいだにある甲南パーキングエリア
は株式会社忍者の里甲南が運営する忍者押しのパーキングエリア。
僕は、立ち寄ったときに、傘を買いました。把手が日本刀の柄状。鍔もついています。真田幸村ヴァージョン。忍者刀のようで面白いです。
甲賀流忍者は、真田と同じく滋野一族。滋野三家(海野、望月、禰津)の望月の分家。真田の本家である六連銭家紋の海野氏ではなく、九曜紋の望月氏
なお、史実としての甲賀忍者については、湖南市立石部南小学校のウェブサイト
内の郷土の歴史
中世の石部>第二章 戦国時代の石部>第一節 六角征伐と甲賀武士>六角氏と甲賀武士
が面白いです。
他には、太平記に登場する婆娑羅大名の佐々木道誉(1991年のNHK大河ドラマでは陣内孝則が演じた)も記憶にあるひとも多いのでは? 近江源氏と言えばこの人です。
ちゃんと調べたら、佐々木道誉は近江蒲生郡佐々木荘発祥の宇多源氏佐々木が北近江の京極と南近江の六角に分裂した後の京極氏出身で、当時は守護ではなく地頭の家でした(^_^;)
このエッセイでは佐々木氏について平安時代の)近江の豪族として言及しています。
宇多源氏ではなく、孝元天皇(B.C. 273~158、第八代天皇。在位B.C. 214~158)第一皇子、大彦命[おおひこのみこと]を始祖とする古代豪族=沙沙貴山君[ささきやまのきみ]転じて佐々木氏。地元では古い郷土の豪族として、この佐々木氏を教えているのかも。万葉集にも登場する近江の豪族です。
僕が小学生時代を過ごした神奈川県相模原市ベッドタウンは台地の上。江戸時代以前は草刈り場。人は住んでいませんでした。
歴史があるな。と信楽甲賀のあたりを思いました。

 

ところで、このエッセイ集は忍者の本ではありません(爆)
四つに章立てされ、滋賀県をネタに軽快におしゃべりを楽しむように読むことができます。
第1章 自虐の滋賀   哀愁のあるある  
先ずは「滋賀県知名度が低い」「他の県と間違われる」ってどういうことなのか、から筆を起こしています。
メーカー勤務が長い僕にとって滋賀県は、ハイテクメーカーの工場が多いことでなじみがあります。検索は「本社・滋賀」ではわかりづらい。いっそのこと「滋賀県 製造業 年収ランキング」で検索するほうが、有名企業「こんなのが滋賀県にあるんだ」とわかりやすいです。
それと、歴史小説を好む僕にとっては、織田信長が幹部を琵琶湖周囲に配置したことで、有名武将の城が沢山在ることは常識。例えばwondertripの記事が参考になります。
wondertrip.jp
それと、元”テツ”としては、関西から日本海側に行くブルートレイン(”日本海”と”つるぎ”、”きたぐに”)が、人口が多い東海道線米原経由(琵琶湖の東回り)の路線か、時短を優先し湖西線[こせいせん]経由(琵琶湖の西回り)かが興味の的であったりしたわけで、
滋賀県ってどこ?」
と言うことはありません。
しかしながら、本書を読むと、いろいろ間違われたり、知られていなかったり、なるほどご苦労なことだな。と面白く(御免m(v_v)m)拝読しました。
第2章 ボーノ滋賀   無名だけどおいしい郷土料理  
郷土料理と、人の味の好みを語りながら、滋賀県の魅力を語ります。章中に歴史ファンも対象とした滋賀県観光プランの提案があります。
なるほど。今なら、ひこにゃんがいる彦根城滋賀県彦根市

www.hikoneshi.com

が歴史ファンにとっての外せない観光スポットになるのですね。
第3章 忍びの滋賀   ミウラとヒメノ  
京都出身で、著者と同い年のみうらじゅん京都市1958~)を引き合いに出しながら、京都との比較で滋賀県を語ります。
第4章 これからの滋賀に   さきがける地方都市として  
具体的なコンパクトシティーの提案です。
趣旨は「みんなでいろいろ考えようよ。」です。押しつけでなく、議論の切っ掛けとしていろいろ提案されています。
最近頻繁に「国会議員は糾弾ばかり熱心にやるのではなく、政策を話そうよ。」と言う趣旨のツイィートを見るので「例えば、こういう話をしませんか。」と、この章を読んで思いました。
特に「車社会」=公共交通機関の衰退の指摘と、その解消法法案が慧眼だと思いました。
テクノロジーが発達した現代、このテクノロジーを、社会問題の解決に役立てなくてどうする。
みんなも一緒に考えましょう。
2020年 1月11日
No. 644