No. 615 西郷どん! (下)/ 林真理子 著 を読みました。
amazonに投稿したレビュー
を転記します。
1865~1877
1877年西南戦争で没するまで。
それはさておき。
男女の機微
西郷の人柄
- b) 西郷の正直で誠実な人との接し方も下巻で引き続き描かれました。
- 下巻では、直接的に木戸孝允との再開時に嫌みやあてこすりを受け付けない(聞き流す)シーンが盛り込まれていて、わかりやすかったです。
歴史の謎に挑む
- c) 下巻では上巻、中巻ではあまり取り上げなかった、歴史の謎に挑んだ側面がありました。
- その謎とは三つ。
- c-1) 征韓論:西郷はどんなことを言ったのか。
- c-2) 西南戦争:西郷の関わり方
- c-3) 孝明天皇と明治天皇:実像、歴史的な役割
征韓論政変
- c-1) 征韓論については、巻末に記されている参考文献の一つ
- 明治六年政変(毛利敏彦著、中公新書 (561)1979/12/18)
-
- を参考にしていると思われます。
- 丁寧に1873年10月17日付公文書=太政大臣三条実美宛て始末書を読み解いています。語り部である西郷菊次郎が説明する体で読者に示しています。
- 僕は「あぁ、なるほど」と思いました。ただし、この説は学者さんの間では論争の真っ最中のようです。あるいはNHK大河ドラマではスルーされるかもしれません。とは言えども、今更西郷隆盛が、開戦の口実を求めて朝鮮との交渉を主張した、とも描かれることはないと思いますが。
c-2) 西南戦争
西郷隆盛が政治家として戦略的に戦争に持ち込んだのではなく、
象徴として期待される役割を引き受けた、と、僕は読んで思いました。
無理を押し通しても、敵を作っても、殖産興業を推し進めて結果を残した大久保利通の政治家としての振るまいとは対象的です。
カリスマとして機能した西郷と、
政治家に専念した大久保。
二人がうまくやることはできなかったのか、と読み終えて残念に思いました。
人物の対立から歴史的事件を語る
その他、登場人物を絞って、
手紙のやりとりが、だんだんかみあわなくなってくる大久保利通との関係が、読んでいてもどかしくなりました。
歴史小説の王道で、歴史の「なぜ?」を読者に提示しながら、
林真理子自身のファンが期待する男女の機微にも触れ、
充実した読書でした。
2018年 3月12日
No. 615
2018年 3月12日
No. 615