No. 611 西郷どん! (中)/ 林真理子 著 を読みました。
amazonに投稿したレビュー
を転記します。
島津斉彬(1809~1858、薩摩藩第11代藩主)が藩主になって6年。初めて参勤交代について江戸に行ってから3年。前年1856年は、天璋院篤姫(1836~1883、薩摩藩主島津家今和泉出身。江戸幕府第13代将軍徳川家定御台所)の将軍家への輿入れ調度品調達を引き受け、無事役目を果たしています。
波に乗って上げ調子の時期からスタート。
つまり、中巻は意気揚々と始まり、ラストは歴史の表舞台の大舞台で大きな役回りを演じ始めるところで終わるのですが、
そして、世の中が激動の中、不遇のうちに過ごす島での様子が描かれるのが中巻。
林真理子の本領発揮です。
流された島で、近隣の家族とご近所づきあいをする西郷のプライベートの描き方に好感が持てました。
愛加那(1837~1902、奄美大島での西郷の妻)に愛情、生きる喜びを教わるくだりは、感激です。
特筆すべきは、西郷の正直さの描写です。
子供は怪我をすると、親を心配させるように大げさに痛がって見せ、手当をしてもらいます。
どこがどのような具合かを客観的に説明するよりも「俺は大変なんだ。」と大げさに嘘をついても親を心配させることを優先します。
つまり、不正直です。
すこし成長し、小学校に上がるころになると、正直になり、怪我をしても適切な治療を求める以上の大げさな態度はやめるようです。
西郷隆盛の場合は(貧乏の大家族の長男と言うこともあり)子供の頃から正直で自分のことは自分でやり、さらに幼い兄弟の面倒を見ていました。
つまり、生まれつき正直です。
僕の経験から考えると、正直な人は、出世しません。
根っから正直な人は、手柄を横取りされても、自分が正直に仕事をしたことに自ら満足し、ずるい人の不正を糾弾しないからです。
では、何故、西郷の場合は、正直者なのに出世したのか。
金銭も、名誉も欲しないのに、何故積極的に働くのかが不思議です。
どうやら、普通の正直者と西郷とは違うはずです。
この違いを、僕は中巻で考えました。
僕が中巻を読み終えて出した答えは、世の中をよくしたいと働きかかける積極性でした。
郡方書役助時代に接した地元の村の人々。彼らが農業に専念し、ちゃんと年貢が納められるように(ちゃんと収穫を得られるように)働きかける仕事の影響かも、と思いました。
苦労する人々の努力が報われる社会を作らねばならぬと言う使命感が生まれたのではないか、と推測しました。
読み終わってみると、戦争物の歴史読み物を読んだつもりが、正直なモノが偉業を成し遂げる術を読み取ろうとしている自分の発見でした。
教訓:正直者は正直であることに満足し、積極性に欠ける側面があることに留意するべし。
もっと良い世の中に住みたいと願い、積極的に役割を引き受け、働くべし。
お手本は西郷隆盛にある。
でした。
この疑問を心に秘めながら下巻に読み進みたいと思います。
2018年 3月 2日
No. 611