No. 472 ぬるい眠り/ 江國香織 著 を読みました。
単行本未収録の短編を集めたオリジナル文庫です。
- ラブ・ミー・テンダー
- 「エルヴィス・プレスリーが毎晩電話をくれるんだ。よっぽど私に御執心らしいよ」と話す母を心配して、夫と子供と犬を後に実家を訪れた私の話
- 私生活における異常さと言うのは、他人がとやかく言うものではない。幸せならばそれでよいのだ。と、プライベートを守る大切さを教えられたように感じました。
- ぬるい眠り
- 大学四年生の夏、かけがえのない恋を葬る雛子。
- 「落下する夕方」 (角川文庫1999/06/25)
- とモチーフを共有するように思える作品です。日常生活を生きる人のたくましさが暖かく感じられました。
- 放物線
- 恋愛を介在しない学生時代の友人仲間男二人、女一人の卒業五年後の会食。
- 家庭を顧みずに「仕事一辺倒」と非難される人が、それなら「仕事と家庭」がすべてで良いのか。こんな友人関係も大切にしたいなぁ。と思いました。
- 災難の顛末
- 愛する猫と共有した災難の顛末。
- とろとろ
- とろとろの美代の愛の生活
- 「甘えたい」と「しっかりしている」の二つを同時に満たす恋愛。
- 夜と妻と洗剤
- 「妻が僕と別れたいと言った。」
- そのとき、こんなふうに対応する男がよいのでしょうかね。
- 清水夫妻
- 新聞の死亡欄を見て、見知らぬ人の葬式に参列する風変わりな夫婦と私
- 人の一生を思い、では、自分はどんな一生だった、と人に思われたいのか。を考えた作品のように思いました。
- ケイトウの赤、やなぎの緑
- 「きらきらひかる」(新潮文庫1994/06/01)
- の十年後を年下の夫婦から語った作品
- 夫婦の心は一つではない。でも、それでも良いのだ。と言うような感じでした。
- 奇妙な場所
- 邦枝と和子と美々子の年に一度の年末買い出しイベント
- 一年を締めくくるたくましい三人の女の情景です。
「家庭を営まなくちゃ」「大切なものを守らなければ」小説のテーマは、往々にして模範的な生き方を強迫観念として埋め込みがちですが、この一冊を読み終えると、「みんな、それぞれ、好きなように幸せになる」と、言ういい加減さに助けられたような感じがしました。自分が良ければ、それは、それで良い人生なのですね。
※印の作品は、『江國香織とっておき作品集』(マガジンハウス'01年8月刊)にも収録されているそうです。
2007年 7月22日
No. 472
No. 472