受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 472 ぬるい眠り/ 江國香織 著 を読みました。

ぬるい眠り (新潮文庫)

ぬるい眠り (新潮文庫)

 
単行本未収録の短編を集めたオリジナル文庫です。
ラブ・ミー・テンダー  「小説NON」'89年12月号※
エルヴィス・プレスリーが毎晩電話をくれるんだ。よっぽど私に御執心らしいよ」と話す母を心配して、夫と子供と犬を後に実家を訪れた私の話
私生活における異常さと言うのは、他人がとやかく言うものではない。幸せならばそれでよいのだ。と、プライベートを守る大切さを教えられたように感じました。
ぬるい眠り  『アリスの国』河出書房新社'90年7月刊※
大学四年生の夏、かけがえのない恋を葬る雛子。
落下する夕方(角川文庫1999/06/25)
落下する夕方 (角川文庫)

落下する夕方 (角川文庫)

 
とモチーフを共有するように思える作品です。日常生活を生きる人のたくましさが暖かく感じられました。
放物線  「すばる」'90年11月号※
恋愛を介在しない学生時代の友人仲間男二人、女一人の卒業五年後の会食。
家庭を顧みずに「仕事一辺倒」と非難される人が、それなら「仕事と家庭」がすべてで良いのか。こんな友人関係も大切にしたいなぁ。と思いました。
災難の顛末  海燕」'92年10月号
愛する猫と共有した災難の顛末。
とろとろ  野性時代」'93年11月号※
とろとろの美代の愛の生活
「甘えたい」と「しっかりしている」の二つを同時に満たす恋愛。
夜と妻と洗剤  週刊新潮」'00年11月23日号※
「妻が僕と別れたいと言った。」
そのとき、こんなふうに対応する男がよいのでしょうかね。
清水夫妻  BAILA」'01年10月号
新聞の死亡欄を見て、見知らぬ人の葬式に参列する風変わりな夫婦と私
人の一生を思い、では、自分はどんな一生だった、と人に思われたいのか。を考えた作品のように思いました。
ケイトウの赤、やなぎの緑  江國香織ヴァラェティ」新潮社'02年3月刊
きらきらひかる新潮文庫1994/06/01)
きらきらひかる (新潮文庫)

きらきらひかる (新潮文庫)

 
の十年後を年下の夫婦から語った作品
夫婦の心は一つではない。でも、それでも良いのだ。と言うような感じでした。
奇妙な場所  朝日新聞」'03年1月1日
邦枝と和子と美々子の年に一度の年末買い出しイベント
一年を締めくくるたくましい三人の女の情景です。
「家庭を営まなくちゃ」「大切なものを守らなければ」小説のテーマは、往々にして模範的な生き方を強迫観念として埋め込みがちですが、この一冊を読み終えると、「みんな、それぞれ、好きなように幸せになる」と、言ういい加減さに助けられたような感じがしました。自分が良ければ、それは、それで良い人生なのですね。
※印の作品は、『江國香織とっておき作品集』(マガジンハウス'01年8月刊)
江國 香織とっておき作品集

江國 香織とっておき作品集

 
にも収録されているそうです。
2007年 7月22日
No. 472