No. 483 色彩の息子 / 山田詠美 著 を読みました。
僕が読んだのは、新潮社
の文庫なのだが、今は集英社らしい。
妄想、孤独、虚栄、倒錯、愛憎、嫉妬、再生……。金赤青紫白緑橙黄灰茶黒銀に偏光しながら、心のカンヴァスを妖しく彩る12色の短編タペストリー。
- 陽ざしの刺青
- 結婚も、子供も目的では無い純粋な愛の証
- 声の血
- ラブアフェアに溺れる若者の陶酔の色でした。
- 顔色の悪い魚
- 同じ色が絶望から希望へ変わる瞬間
- 高貴なしみ
- 彼を高貴とするなら、清濁併せ呑むタイプの男は、高貴と言えないのだろうな。と、高貴さが併せ持つ弱さを感じました。
- 病室の皮
- 誰でも、自分を装う事をすると思うけれど、そして、人付き合いの上手いと言われる人ほど装いが多いそうですけれども、装っている自分を病んでいると認識したときの心の変化が痛ましい一遍でした。
- 草木の笑い
- 美しい人を花に喩える事はありますが、
- 白熱電球の嘘
- 「病室の皮」とは対照的に、無自覚に嘘を生きる主人公が陥る不幸が印象的でした。
- ヴァセリンの記憶
- 本能が求めていた楽園にたどり着くまで。
- 雲の出産
- キャラクター設定は逆ですが、「風葬の教室」(「蝶々の纏足・風葬の教室」新潮文庫1997/03/01に収録)
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- 埋葬のしあげ
- 劣等感を意識し、身近なものとの比較の中で生きてきた自分と決別する大人への変化が気持ちよい一遍です。
- 黒子の刻印
- 「埋葬のしあげ」とは逆に身内から心の独立が出来ない人の不幸として読みました。
- 蜘蛛の指輪
- 幸福感と言うのはいろいろな得られ方をするものですが、愛を得た主人公をその至福の典型として見せられました。
2007年9月22日
No.483