No. 510 ロードムービー/辻村深月 著 を読みました。
僕が読んだのは単行本。
その後、講談社ノベルスに収録され
文庫化され
文庫版がKindle化され、
収録作品が違っているようですが、
僕は(今のところ)単行本だけしか読んでませんm(v_v)m
『冷たい校舎の時は止まる』(講談社文庫2007/08/10)
から生まれた短編集。誰もが抱える不安、悩み、苦しさに向き合う小学生と中学生、彼らを見守る大人の物語。
- 読者である僕自身の子ども時代の心像をリアルに思い出させる心理描写、僕が彼らを見守る立場である「大人」にふさわしいのかどうかを考えさせられる二面性、トリッキーなストーリー展開など、著者の持ち味は短編集でもそのまま生きています。「冷たい校舎の……」との関係は、読み終わってから、じっくり考える楽しみとしてとっておきましょう。みんな、幸せになろうね。
- 「ロードムービー」(小説現代特別集「esora」vol.5、2008/08)
- 子分のワタルを伴って家出をするトシ。
友達を思う気持ちと、それを実現する行動力を併せ持ったトシにたくましさを感じました。 - 「道の先」(小説現代特別集「esora」vol.5、2008/08)
- 学習塾で同級生の中心人物である大宮千晶。中三。
僕がたまに見る学園ものTVドラマでは、悪役として登場する理不尽なクラスの「顔役」に対する一般生徒の工夫、などが頻繁に描かれているように感じますが、この一遍は、ズバリ「顔役」の葛藤と、彼女を救う大学生のアルバイト講師が描かれています。人の上に立つ立場の人は「孤独」を背負いますが、学校や学習塾などの狭い社会でも「顔役」は同様に孤独なのですね。企業のトップなら、その孤独を一人で背負う必要がありますが、子どもにとってはその苦労をサポートしてくれる大人がいると救いになりますね。サポートしてくれる大人がいなければ、子どもでも一人で困難を乗り切り、それなりの成長を遂げるストーリーも考えられますが、この一遍のように、「ありがたい大人」がいるストーリーも良いですね。あ、これは、僕が人生で何度かあったピンチに於いて、切に「誰かに助けてほしい」と願ったときに、助けが現れず、自分でどうにかするしかなかった悔しさからくる感想です。同じ立場にいる子どもが、この本を読んで、さらに僕のこのサイトの感想文を読んでいるのだとしたら、「この小説のように、『大丈夫だ』と言ってくれる大人が居なくても、大丈夫なんだよ。」と僕が言ってあげたい。
ここまで書いてこの短編を理解しました。
この小説自体が、ピンチに陥った子どものヘルプになります。 - 「雪の降る道」(小説現代増刊号「メフィスト」2005年1月号)
- 小学校二年三組のクラスメイト「みーちゃん」と「ヒロ」の物語。病気で学校を休みがちな「ヒロ」と、彼を見舞いに来る「みーちゃん」
「ヒロ」の不器用さにいらいらしながら物語を読み進むのですが、子どもは気付く。そして成長する。と言う事を読者である僕が気付きました。
この物語の最後は、「エピローグ、またはプロローグ」として、他の物語へと繋がっていきます。
2009年 1月 7日
No.510
No.510
終章に特別書き下ろしの掌編「街灯」と、「道の先」の続編的中編「トーキョー語り」を加えたノベルス(2010/ 9)の文庫版(2011/ 9/15)を読みました。「街灯」は文庫で序章に引っ越してきています。と、吉田大助による文庫解説で知りました。
今回は、ちょうど「光待つ場所へ」(講談社文庫2013/9/13)を読み返したタイミングでした。スピンオフの関係を明らかにするため、登場人物の年表を作りました。
- 街灯(書き下ろし)
- 冬の夜更け、国家試験の勉強に疲れた鷹野博嗣がマンションの自室を抜け出し、自転車を漕いで出かける。
- 「冷たい校舎の時は止まる」(講談社ノベルス2004/ 6/ 5)のスピンオフ。僕の推定では、2006年の12月。彼女は来年修士課程を終え受験資格を得て臨床心理士の試験を受けるタイミングと推測しました。
- ちなみに、その十年後(推定2016年)が「ロードムービー」で、結婚するのはこの二人なのではないか、と推測しました。
- つまり「ロードムービー」のトシは、このとき既に生まれている!
- トーキョー語り(『メフィスト』2009年1月号)
- 品川ナンバーの高級外車に乗って現れた垢抜けた「久住薫子」。彼女は、さくらの同級生として転校してきた同じ高校二年生だった。
- 「道の先」の2年後の続編、8月16日が金曜日なのは、2002年なので、2年後は2004年と推定しました。
- スクールカーストを扱っているのですが、勧善懲悪ではなく、和解を描いています。
- 遠山さんが、鷹野や清水あやめの後輩になれると良いですね。
2019年 4月20日