No. 511 遺伝子が解く! 美人の身体/竹内久美子 著 を読みました。
文藝春秋社週刊文春連載「 ドコバラ!」からの単行本化(旧題「ズバリ、答えましょう」から通算第七弾)。タイトルの「ドコバラ!」はドウブツコウドウガク(動物行動学)バラエティーの略です。
- テレビに出てくるあの人この人動物行動学でメッタ斬り!?
僕は、あまりテレビネタは得意ではないのですが、大食いタレントを解説した項目では人間の消化器官の仕組みを易しく解説してくれて、ちょっと得した気分です。
- 人間も動物もやっぱりドコバラ!
次は、三面記事をネタにして、痴漢や「赤ちゃんポスト」の動物行動学的解釈です。
僕が特に面白く感じたのは、7段の「人食いザメ事件の裏事情」です。海底ケーブルを鮫が囓る理由や、撞木鮫(ハンマーヘッドシャーク)の奇妙な頭の形の意味、サメが人を襲う、その標的の絞り方などを推察して解説した記述には、「読んで良かった。」と納得をしました。
8段の「年寄りの血はまずいのか!?」はABO型の血液型での刺され方の違いについても言及しています。(詳しくは本書にも記載しているとおり同じ著者の「小さな悪魔の背中の窪み」(新潮文庫1999/02/01)
国立遺伝学研究所の遺伝子学電子博物館から遺伝学とは>進化と遺伝>遺伝子の進化について>1. 遺伝子の進化とは>ABO式血液型
ちなみに、僕が平行して読んでいる(同じ分野の本を平行して読んだので、記憶が交錯しているのですが(^^ゞ)リチャード・ドーキンス著垂水雄二訳「祖先の物語」小学館2006/9/20
また、9段の「リーダーなしでもビルは建つか!?」では、魚の群れから自己組織化に言及していて「これぞ、バラエティーのおもしろさよ。」と膝を打ちました。 - 人間も動物たちも何はさておき「セックス」だ!
この章は、近年の生物進化の成果「姓淘汰」を中心に展開します。本書の白眉(と僕は思った)6段「イチョウの精子、プールを泳ぐ!」では、明治の日本人がすでに世界レベルの研究成果を挙げていた例として認識されるイチョウとソテツからの精子の発見とその意義を紹介しています。(手軽には、東京大学総合研究博物館からウェブミュージアム>博物館データベース>刊行物>刊行物>東京大学コレクションIV 日本植物研究の歴史 小石川植物園300年の歩み>と下っていって、精子発見とその意義で、立ち読みが出来ます。)
- 世間の出来事…。やっぱりドコバラ!?
この章の5段「「准教授」が大学組織を改革する!?」では、最近耳にする「准教授」の設置と今後への期待が述べられています。また4段「特別天然記念物って食べてもいいの?」では、「ホタルイカを食べて良いのか?」の疑問に答えながら「天然記念物」の正確な定義が紹介されています。
- 動物と植物のこわ~い話
「スカンクのおなら」(1段)、狂犬病(2段)、ドジョウの鳴き声(4段)、ホタテ貝の目(6段)、ピロリ菌(8段)、ササ、竹の開花(9段)などバラエティーとしての生物学炸裂!でした。
ところで、(今回は、僕が文句をつけている点が多くて、申し訳ないですけれど、)4段「ドジョウは肛門で鳴く!?」で、両生類以降の「肺臓」、魚類の「浮き袋」の起源に言及していますが、魚類の浮き袋って、肺魚の肺が退化(と言うか機能変化)したものでしたよね? ついでに、ひれも手足が変化したものですよね? 今のほとんどの(硬骨)魚類は、デボン紀に板皮類ディニクチスに海のおいしいところを占拠されて、浅い川に逃れて、肺呼吸、川底の藻をかき分ける手足が必要となり、進化させた魚類が、再び海の戻った(一部はそのまま川に残った)ものの子孫だから。と、僕は理解していますが、皆さんは如何ですか? - 虫たちの変でしつこい話
本性も引き続き、バラエティーのおもしろさ炸裂!
マツクイムシ(6段)、ダンゴムシ(8段)、飛ぶアメンボ(9段)など。特に10段「昆虫の飛行能力を比較する」は秀逸でした。 - トリにてトリを相つとめまする!
最後は、僕たちも目にする鳥の話題で、自然への関心をかき立てて終わりになります。
2009年 2月12日
No. 511
ピロリ菌を除菌にチャレンジする事にしました。たしか「この本に発見の経緯が解説してあったな」と思い出し、文庫を買って読み返しました。第五章「動物と植物のこわ~い話」第8段「ピロリ菌は除菌すべきか?」で触れています。
感染の経緯についての質問に答えながら、ピロリ菌発見の経緯や、除菌すべきか否かの議論なども含め、ピロリ菌の(2008年当時の)概要を理解出来ます。
そのほかにも、同じ第五章の「ササ」の開花期間の研究や、第一章の「ギャル曽根、驚異の胃袋に迫る!?」での胃の働きの解説、第三章の「イチョウの精子、プールを泳ぐ!」での日本人によるイチョウとソテツでの精子の発見と藻類から真葉植物に続く植物の系統決定につながる大発見を解説しています。植物の系統については、wikipediaの「ストレプト植物」の分類(表)がわかりやすいです。
男女の事に限らず、科学技術の解説書としての魅力が詰まった一冊でした。
2014年12月 6日