受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 569 同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか/竹内久美子 を読みました。

個性として理解する手助けになりました。

なぜクラスに一人いるのか 同性愛の謎 (文春新書)

なぜクラスに一人いるのか 同性愛の謎 (文春新書)

 
三島由紀夫オスカー・ワイルドからフレディ・マーキュリーまで、古今東西の事例や本邦初公開を含む学説から「子を残しにくいはずなのに常に一定の割合を保ち続ける」同性愛者のパラドックスに挑む。
  カバーそでより  

ヒトの同性愛に関する社会生物学分野の研究成果を紹介する一冊です。

はじめに
冒頭でポジトロン断層法(PET)を用いて、女性異性愛者、男性同性愛者が男性フェロモンに、男性異性愛者、女性同性愛者が女性フェロモンに反応することが確認された研究結果を紹介しています。
異性愛者が、異性に近づいて、心がときめく。このときめきを脳の働きとして確認出来るようになった、と僕は理解しました。
そして、同性愛者の場合は(異性愛者が異性に接して生じるこころのときめきが)同性に対して起こることが確認できたわけです。
第一章 男性同性愛者は超男性か、超女性か
医療診断技術の進歩に伴って急展開をみせる社会生物学
命題「同性愛は、子を残しにくい。それでは、なぜ、人類に不変な存在として、連綿と続いているのか。」を主軸に、
第一章では、「はじめに」を引き継いで、先ず男性同性愛者が脳の機能としては女性的である一方、身体的特徴は男性らしさが際立つ調査結果を紹介しています。これはお母さんのお腹の中にいるときに、脳の女性的特徴(ホルモン分泌の周期性)を失わせるテストステロン(男性ホルモンの一種)の分泌が少なかった事を示唆する一方、男性の身体を作るジヒドロテストステロン(Stanolone)の分泌が活発だったことが示唆されます。僕は化学屋なので構造式が知りたくなり、ネット検索したところ、試薬メーカーの東京化成工業(株)のウェブサイトで確認出来ました。なるほど、ジヒドロテストステロンは、テストステロンのひとつのC=C二重結合をH2で開裂させた構造ですね。
次に、長じても男性ホルモンの分泌には差がない一方、女性ホルモンへの反応は女性異性愛者に近い反応があるとされる調査結果を紹介しています。
そして、行動面では、男性的(異性から(※)の誘いに、比較的気軽に応じる傾向がある)と言うことです。
(※)この場合は、男性同性愛者同士
第一章ではこの後に余談で、一部の女性が趣味とするボーイズラブ小説(マンガ)に触れています。(結論を言うと、ボーイズラブを好む女性は、同性愛とはあまり関係がなく、単なる好みの一種のようです。)
さらに余談で、あたかも男性フェロモンの存在を知っているがごとき(医学での発見は最近の出来事)、三島由紀夫作品、女性フェロモンの存在を知っているがごとき(こちらも発見は近年)田山花袋の文学作品を紹介しています。
第二章 遺伝子
「遺伝子」という言葉を用いると、過剰に拒否反応されるケースがあることを考慮し、慎重に説明しています。
この章では、ある種のホルモンが合成されにくくなる遺伝子の突然変異により、暴力的になってしまう疾患を例に示し、心の問題と考えられる事柄であっても、遺伝子(遺伝子は遺伝だけではなくて、身体を機能させるホルモンなどのレシピでもある)の変異の影響を受けることを紹介しています。
性格なども遺伝の影響が或る一方、もちろん環境の影響も受ける事を繰り返し説明しています。
で、男性同性愛者になりやすい遺伝子が(男性の場合)母親からしか受け継がないX染色体上にあるかもしれない(反論もあるそうです。)研究結果を紹介しています。
この章の余談では、戦国時代の時代小説好みの方には馴染みのある、お殿様と寵童との関係など、女性が居ない環境での同性愛について考察しています。
第三章 
脳、すなわち、言語や、論理思考の性的特徴を吟味しています。第三章以前にも述べられているとおり、男性同性愛者の脳は、女性的な面があることを述べています。
この章はだいぶ脱線して、「オキシトシン」の効用について詳しく述べています。
なるほど「手当」は、手を当てることだけでも効果があるのだな。など。など。
もう一つ余談として、性転換する一族としてTVでも紹介された、一族の遺伝的欠陥を紹介しています。男性同性愛者と丁度逆で、男の脳を作る働きは、男性異性愛者と同様と言うことです。
第四章 謎が解けてきた!
最後は、多くのアーティストも亡くなったエイズ禍について述べた後、一部の男性同性愛者を生む原因となっている兄弟との生年順の特徴について、同性婚の合法化について(これについては、本書が大変説得力があり、僕も「なるほど、同性婚は認めたほうがよいな。」と思いました。
最後に、本命の仮説を紹介して一冊を締めくくります。

 

読み終えて感じたのは、同性愛と言うのは、人の個性だ、と言うことです。
どちらかが正常、どちらかが異常と言うべきでは無いと言うことです。

右利きと左利き、背が高い、低いなどと同じように人の個性の一つだと理解しました。

本書から話が逸れますが、例えば日本人男性に5%程度の割合で生じる色弱。実は、三種類ある錐体のうちの一種類が別の機能を持ち、淡い濃淡の識別能力が優れていると聞いたことがあります。

ベトナム戦争(1961~ 1973)では、米軍が色弱の兵士を選んで偵察機に載せたそうです。カモフラージュされたジャングルの中の敵基地を発見させるために。この作戦は成果があったそうです。
現代の都市生活では不便もある色弱。でも長い人類の歴史の中では、仲間の中に何人かの色弱者がいることで、例えば狩猟で獲物を発見するのに有利だったなど、重要な役割を担ったと想像出来ます。つまり、どちらかが正常、どちらかが異常と言うよりは、個性として理解するべき、能力の違いと理解出来ます。
本書では同様に、同性愛も考察します。男性で4%、女性で2%程度=つまりクラスに一人程度の割合で普遍的に存在することから、社会生物学的に、意味のある存在であることが示唆される事を説明し、その意味を見出す研究の紹介になっています。
ちなみに、僕自身の例で言えば、現代人では3割もいるそうですが、ネーザル・サイクルを持っています。常に左右のどちらか片方の鼻の穴で息をしています。(常に片方が詰まっています。鏡で確認すると、詰まっている側は粘膜が腫れています。どうやら活発に繊毛運動しているようです。サイクル(3時間程度)が変わると、通り始めた側のウェットな内部とドライな出口にちかい境界線に排出されたものがたまってます。(いわゆる鼻×そ(^_^;))自分自身を観察/研究した結果、僕はこれを「鼻腔清浄機能」と理解するに至りました。)しかしながら、小学四年の健康診断では「鼻炎」と診断されました。しばらく耳鼻科に通いました。なんら変化がみられないまま、適当に治療をやめました。
ところで、僕は、花粉症に悩まされた経験がありません。
「子供の頃はな垂れ小僧だった人は花粉症にならない。」
と聴いた事があります。もしかしたら子供の頃にはな垂れ小僧だった人は、僕と同じように常に片側の鼻腔を清浄しているネーザル・サイクル体質の人で、清浄機能が発達しているから花粉症にもなりにくい。と言うのはどうでしょう?

 

 

「なるほどなぁ。」と感じることが多かったです。
科学の進歩は、人の生活を豊かにするばかりでなく公害などの弊害を伴うことは、身にしみています。
社会生物学研究の成果も同様に、研究成果が不愉快に思える場合もあります。
例えば、ヒンドゥー教では牛を大切にします。家族のように牛が飼われている家庭では、マラリアなどを媒介する蚊が人ではなく、牛を刺すそうです。「牛を大切にしましょう。神様として家族同様に。」と教えるヒンドゥー教を信じる人は、そう言う理由で他の宗教を信じる人よりも、伝染病に掛かる頻度が低い。だから、長い歴史の中でこの習慣が残っているのだ。と、社会生物学は解明したワケですが、宗教として牛を大切にしている人は、そんな理由は聞きたくないだろうと想像します。
本書で扱っている同性愛についても、社会的、歴史的な意味を知る事が、万人を満足させる事にはならないだろうと思います。
でも、僕は、本書を読んで良かったと思います。
それは、人への理解が深まったと感じることで、僕が満足しているからです。
同性愛と言うのは、伊達や酔狂ではなく、また、奇をてらってポーズを見せているのでもなく、その人の個性である、と僕は理解しました。

 

 

近年、職場では性別の扱いについて配慮するように求められ、定期的にセクハラ防止などの教育、周知がされるようになりました。
同性愛についても、適切な配慮がなされるようになれば良いな。と思いました。
誰でも、自分の能力に見合った職場で、存分に力を発揮出来る社会というのは、過ごしやすく、効率も良いと思います。
そんなふうに思いを巡らした一冊でした。
2015年1月12日
No. 569