No. 553 小さなトロールと大きな洪水/ヤンソン 著 を読みました。
トーベ・ヤンソン(Tove Marika Jansson 1914/ 8/ 9 ~ 2001/ 6/27 スウェーデン系フィンランド人)のムーミンシリーズ最初の本です。原題はスウェーデン語で"Småtrollen och den stora översvämningen" (フィンランド語:Muumit ja suuri tuhotulva)。スウェーデン語で書かれたもので、1945年にフィンランドのソーダーストロム社"Söderström & Co" 2012~「シルト&ソーダーストロム」 "Schildts & Söderströms" から出版されました。本書(講談社文庫21世紀版ムーミンの本)の訳者あとがき(青い鳥文庫版への「訳者あとがき」)によると、初版は表紙をいれても48ページにしかならない小冊子で、本屋さんにも置いてもらえずキオスクや新聞スタンドにならべられ、それっきりとなったそうです。ようやく再版されたのが1991年。著者77歳の年でした。
ほぼ全ページに挿画が配された本編は98ページまで。
これに、
が付録されています。
新装版講談社文庫のシリーズでは、冨原眞弓が、全9巻に解説を寄せているようです。
1991年当時、第二作「ムーミン谷の彗星」
を訳した下村隆一は既に亡くなっており、第三作「たのしいムーミン一家」
第八作「ムーミンパパ海へいく」
を訳した小野寺百合子は、共に八〇歳を超える高齢になっていました。
を旅行先のホテルで見つけて、読み囓っただけなのですが、トーベ・ヤンソンと面識があり、訳の補助を受ける事が出来た日本人は、他にいなかっただろうと思うのです。
そして、埋もれていた幻のシリーズ第一作が本国で再版された翌年に世界に先駆けて和訳され、日本で出版されました。
途中チューリップから生まれた女の子の妖精「チューリッパ」、灯台守の赤い髪の少年と出会います。
家族で一致団結して、と言うわけではなく、(ムーミンパパは、物語の最後で合流します。)
また、徐々に集まって結束の堅いチームを作るのでもなく、(チューリッパは、赤い髪の少年のところに留まり、冒険から外れます。)
その時々にいる妖精、手元にある道具で、ハプニングを乗り切っていく物語は、いかにも戦時中の困難の中で執筆されたことを物語っています。(本作は著者の祖国フィンランドがソ連の侵略に抵抗して激しい戦闘を強いられた冬戦争を戦っている最中に執筆されました。)
自然の中で生きると言うことは、こういう事かも知れない。
ムーミンシリーズは、こうして幕を切って落とされました。
2014年 1月15日
No.553