受動態

Daniel Yangの読書日記

No.303 作家ってどうよ?/鈴木光司、姫野カオルコ、花村萬月、馳星周を読みました。

ニッポン放送ほか全国ネットで放送されたラジオ番組「ザ・BUNDANバー」(1998/10/5~1999/4/2 20:50~21:00)をもとに、作家四人のお喋りを一冊にまとめたアンソロジーです。
アンソロジーの良いところは、機会を得ずに読むことのなかった作家の文章に接することです。(でも、この一冊は、ラジオのお喋りを  誰が文章にしたのか解らないところが微妙なところなのですけれども  収録したものなので、作家の文章ではない面白さが味わえます。)
僕は、この本を姫野カオルコ ファンサイトで知りました。馳星周のファンサイトに出入りしている人が、姫野カオルコ ファンサイトの電子掲示板に出張書き込みして曰く
「この本が出版されるけれども、まだこちらのサイトでは告知されていない様子だから、やってきたよ。」
と。とても新鮮な一冊との出会いでした。
が、アンソロジーのため本屋さんで迷いました。いったい、どの作家の棚に並んでいるのでしょうか? 結局見つけられないまま、トラブルの応援で愛知県の工場に出張。出張初日から徹夜で検査のお仕事。夜勤明け、寝ぼけまなこで町の本屋へ。そこで、偶然発見して購入。ですから、今パソコンのキーボードの横にこの本を置いて眺めていると、工場での夜勤が思い起こされます……。
そんなようなわけで、僕は姫野カオルコをキーワードにこの本と出会いました。馳星周はベストセラーの「不夜城
不夜城 (角川文庫)

不夜城 (角川文庫)

 
を文庫で読んでいます。鈴木光司花村萬月が初体験でした。
 
鈴木光司のお喋りは、肉体的にも、精神的にも、社会的にも、健康のかたまり。WHO(中学校の体育で習うよね。国連の「世界保健機関」(^-^)v)が定義する「健康とは」の代表選手のようです。鈴木光司=ホラー小説の著者のイメージでは、今後とも接する機会が無かったであろう小説を早速一冊買ってきてしました。(「楽園」新潮文庫1996/1/1 来月感想をアップロード予定)
楽園 (角川文庫)

楽園 (角川文庫)

  • 作者:鈴木 光司
  • 発売日: 2010/02/24
  • メディア: 文庫
 
姫野カオルコのお喋りは、紅一点であり、他の三人とちがって、ふつうの女の子の悩みに等身大で熟慮された考えを披露しているように感じました。特に「自然体」の段は、爆笑しつつも、日頃、友達との距離感や自分のスタンスに焦りを持ってしまう人(ほんとうの私をさがしている人?)には、必読の示唆だと思います。
 
花村萬月のお喋りは、見習いたいけれども「よい子は真似しないでね。」的に、真似の出来ない豪快な生活を披露した聴取者へのサービス。サラリーマン指向の僕にとって、別の価値観に触れる良い機会に思えました。あ、非サラリーマン指向と言う意味では、鈴木光司が語っている「将来の職業」を目指す指向性も面白く感じました。非サラリーマンと言うより非公務員と言う方が的確かもしれないですが。
 
馳星周のお喋りは、四人のなかでの最年少。若干遠慮気味に、作家になる切っ掛け、執筆活動を披露しています。映画も売れて露悪気味に収入と出費を語る様も面白い。作家デビューも四人の中では一番最近のためか、文壇の社交やパーティー、数々の賞の受賞、落選を一般市民の感覚で教えてくれています。サラリーマンである僕にとっても、大変分かり易く、親しみを持って読めました。また、そんな馳星周のスタンスがこの一冊の締めくくりになっていました。
 
この本のさらなる魅力は、四人が同じテーマに語っている点で、
「作家になった切っ掛け」
「これから大人になる人たちへのメッセージ」
「パソコン(ワープロ)」
「他の作家について」
など、四者四様の思いが面白く味わいました。
2001年 8月 8日
No. 303
 
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姫野カオルコのブログ
本日の記事
「作家の年収(村上春樹以外の作家の年収)をカンちがいしていないか? by姫野カオルコ(嘉兵衛)」
で、この本を紹介していたので、便乗して本日のエントリーにしました。
ブログの趣旨は、
教えてgooのちょっと勘違いな質問&回答

oshiete.goo.ne.jp

を目にして、
「みなさん、小説家の(収入上の)実態をご存じないようですので、先ずはこちらをお読み下さい。」
と、紹介したものです。
ちなみに、「映画化されてもそんなもの?」と最近話題になっていたので、僕も検索してみたところ
石黒謙吾のブログの2010.4.12の記事

今日は具体的数字をあげて、『盲導犬クイールの一生』1冊の収支と他の状況を説明したいと思います。

と紹介していたのが具体的で詳細金額まで記されていてためになりました。皆様も、ご参照下さい。

新装版 盲導犬クイールの一生 (文春文庫)

新装版 盲導犬クイールの一生 (文春文庫)

  • 作者:石黒 謙吾
  • 発売日: 2015/06/10
  • メディア: 文庫
 
テレビ番組や、映画になっても、安月給のサラリーマン以下と言うわけです。
ましてや、映画にも、テレビドラマにもならない作家の年収たるや推して知るべしでしょう。
 
ちなみに、星新一(1926/ 9/ 6 ~ 1997/12/30)が、ショートショートの後継者として遇した江坂遊は、2011年に、ついにショートショート1001作を達成しましたが、サラリーマンの本業があります。
これは、最相葉月の伝記「星新一 一〇〇一話をつくった人」
の第十一章「カウントダウン一〇〇一編」(僕の手元にある分厚い単行本では四六三ページ)にエピソードが紹介されています。

 

最近ではテレビドラマも滅多に見ることが無くなった僕にとってエンターテインメントと言えば、「小説」です。
によると、母語人口で第九位で、
おそらく、日本は母国語で読める小説が多数出版される、数少ない国(言語)なのだと思いますが、
それでも、小説家が職業として成り立つのが難しいと聞くと不安です。
さりとて、かつての社会主義国のように「国が認めた作家は公務員として遇し、生活を保障する」ような事が得策ではないと思うので、
ミュージシャンのように(ミュージシャンも、結構似たような状況かもしれないですが)確実に儲けられるような仕組みが、電子出版の普及と共に構築できると良いですね。
それでは、夜も更けましたので、この記事をアップロードしたら、僕はすぐに眠りにつきます。みなさま、ごきげんよう
2013年5月13日月曜日