以来30年近く経て、
過去の著作との重複を気にせず、現在の動物行動学の成果を豊富に取材し(論文を精読し)、わかりやすく現代人の興味に配慮してまとめた一冊です。
を日本人にわかりやすく解説した「そんなバカな!遺伝子と神について」(文春文庫1994/ 3/10)
だと思います。
「私たち人間の好き嫌いや、習慣、掟には、
ここまで生をつなげてきた、祖先からの経験の
意識、無意識の知恵が結晶したもの。」
と説明された、その具体例は、三十年の間にいろんな分野で研究され、意外な発見も沢山ありました。
当初は、子に対する親の命がけの行動(利他行動)や、同種間での殺し合い(利己行為)の説明などが目新しかった動物行動学の研究ですが、
本書で扱われている内容は、人間自身の心理が豊富。
研究は、やはり人間自身に興味を向けて進歩しているのだな。と感慨深いです。
本書は、プロローグで概要を説明した後「部屋」として4つの章立てで構成されています。
第1の部屋「恋愛」
第2の部屋「家族」
第3の部屋「印象」
第4の部屋「体」
あとがきの後、巻末に参考文献(紹介した論文)が掲載されています。
本書は、みんなが語りたい進化心理学の基本的な考え方と、初歩的な応用が一冊で読める仕組みです。
統計のデータの読み方(全体としては、傾向があったとしても、個人としては、どちらかの二者択一ということのとらえ方)も身につくと思います。
進化論を人間に応用した雑学に興味がある方には、最初の一冊としてオススメです。
この一冊で「もっと読みたい。」という方にいくつか挙げます。
- 「女は男の指を見る」新潮新書2010/ 4/20
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- 同じく総括的な内容ですが、より先端の研究成果に着目し、詳しく述べられています。
- 「指からわかる男の能力と病」講談社+α新書2013/ 6/20
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- 男性の魅力と能力に注目しています。
- 「本当は恐い動物の子育て」新潮新書2013/ 3/20
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- 世界中の民族を見渡し、本書でも取り上げられた間引きが決して発生しない婚姻形態を紹介した特にオススメな一冊。
- 本書でも2歳児の最初の反抗期について述べられているように、言うことを聞かない子どもへの対処に悩む若いお父さん、お母さんには救いの一冊になるかも。里親として子育てをする人の苦労を紹介している項目が特に印象深いです。
- 「同性愛の謎 なぜクラスに一人いるのか」文春新書2012/ 1/20
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- 4種類の血液型は、それぞれ「型」として習知されています。Oは劣性遺伝ですが、これはAやBがあるとOが性質として発現しないことの対比で、性能の優劣ではないことも習知されています。つまりどの型であっても異常ではなく、正常です。
- 同性愛者も頻度からすれば、異常ではなく血液型と同じように人のタイプの一つと考えられます。つまり進化を生き抜いた理由があるはず。それはどういうことなのか。
- ちなみに、我が読書感想文サイトで「本書から類推して色覚も、今まで異常と言われていたC型以外の人(P型やD型)も、異常ではなくタイプが複数あるうちのいくつかだよな。」と記したところ、うれしいやりとりがありました。P型の人から迷彩服の濃淡の見え方に教えて頂いたのです。(濃淡に敏感で、迷彩服はとても目立って見える。まるで子どもがふざけて奇抜な服を着ているかのごとく、と。)「なるほど、そりゃ一族にP型の人が必須だな。狩りや、戦闘には連れて行かなくては。」とその意義を知ってしまったと言うエピソードがうまれました。
- 「草食男子0.96の壁 動物行動学的オトコ選び」文藝春秋2010/ 2/25
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- 女性向けの男性選び考察。
- 僕は「草食男子」は、現実に即さない社会的に過度に保護された女性の権利主張(例えば、子どももいないのに主婦として働かずに大きな顔ができるのか。)への対抗策なのではないか、と思っているのですがね。
2020年 1月21日
No. 645
No. 645