受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 443 らせん / 鈴木光司 著 を読みました。

らせん - (角川ホラー文庫)

らせん - (角川ホラー文庫)

 
幼い息子を海で亡くした監察医の安藤は、謎の死を遂げた友人・高山竜司の解剖を担当した。冠動脈から正体不明の肉腫が発見され、遺体からはみ出た新聞紙に書かれた数字は、ある言葉を暗示していた。
……「リング」とは?
死を追う安藤が、ついに到達する真理。それは人類進化の扉か、破滅への階段なのか。
史上かつてないストーリーと圧倒的なリアリティで、今世紀最高のカルトホラーとしてセンセーションを巻き起こしたベストセラー、待望の文庫化。
   カバーの背表紙を転記  
毎朝、海水浴で亡くした子供の夢で目が覚める安藤満男、監察医。ある日、彼は大学の同級生高山竜司の司法解剖を担当した。解剖の結果、死因は心筋梗塞と判明するが、縫合したはずの高山の腹から安藤へのメッセージが伝えられた。「RING」とは何を意味するのか?
デビュー作「楽園」(1990/12新潮社)
楽園 (角川文庫)

楽園 (角川文庫)

 
に先だって書かれた「リング」(1991/ 6角川書店
リング (角川ホラー文庫)

リング (角川ホラー文庫)

 
から五年を経て上梓された本作は「リング」の謎、登場人物を引き継いだ続編です。が、しかし、リングを越えるおもしろさでした。
実のところ、「リング」を読んでの感想は「面白い。だけれども、作者は理系の分野には少々苦手の様子だな。」だったのです。それは、お約束事とは言えども、もうちょっと説明出来るトリックが欲しいなぁ。と言う不満でした。ところが、この「らせん」では、ほぼ完全と思える遺伝子の理解を元に、サイエンス・フィクションとして物語を再構築していたのでした。
そして、この世界観に安心して浸かりながら、読み進んでいくに従い、おもしろさはスリルに変わりました。前作で浅川が解決したかに見えた危機は、逆に破滅へ導かれて行くようです。この破滅への道のりも、天変地異などのありふれた手法では無く、トリックに用いた生物学的な破滅です。世界観が納得できるだけに、破滅への危機が実際の出来事のように不安を煽ります。
ラストで安藤が選択した世界の行く末も、「自分も同じ立場だったらそうするであろう。」と納得できるだけに、世界の行く末を心配して読み終わりました。前作に引き続き「続編はどうなるのか?」と待望する結末でした。
2005年 5月 8日
No. 443