受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 628 少年たちは花火を横から見たかった / 岩井俊二 著 を読みました。

やがてこの町から消える少女なずなを巡る典道と少年たち。花火大会のあの日、彼らに何があったのか? 少年から青年になる時期の繊細で瑞々しい友情と初恋の物語。映像化されなかった幻のエピソードを復刻、再構成し、劇場アニメ版にあわせて書き下ろされた待望の小説。テレビドラマ版『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』のOAから、24年の歳月を経てよみがえる原点ともいえる物語。
岩井俊二版『銀河鉄道の夜』。
  カバーの背表紙を転記  
amazonに投稿したレビュー
を転記します。
 
2017年8月18日(金)より全国東宝系にて公開された新房昭之監督の劇場アニメーション版リメイク『打上花火、下から見るか?横から見るか?』
公開に合わせて出版された、実写版原作(※)の原作小説。
(※)「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」フジテレビの「If もしも」シリーズとして1993年8月に放送され、1995年8月に映画として劇場公開されました。
打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか? [DVD]

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とは言えども、本作(この角川文庫の小説「少年たちは花火を横から見たかった」)は、その後の岩井俊二監督作品のように、あらかじめ企画書の代わりに書かれた小説ではなく、TVドラマ版公開から24年の歳月を経て、改めて執筆された小説です。
 
典道の一人称で描かれています。
典道が行かない灯台への冒険はどうなったか、と言うと、
後日談として、中学校、高校で再びクラスメートとなった和弘、純一から聞いた話として成立させています。
「ifもしも」は棄却し、全編を通し、リアリティー小説です。
 
また、原作実写版「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」のメイキングDVD
少年たちは花火を横から見たかった企画・発売元:(株)ロックウェルアイズ、販売元:ノーマンズ・ノーズ 1999/8/7
少年たちは花火を横から見たかった [DVD]

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で紹介されている奥菜恵山崎裕太が朗読する)本作品のモチーフとなった(監督が大学生の時に着想した)小学生の駆け落ち物語「檸檬哀歌」も取り入れられています。
 
おなじDVDで紹介されているモチーフとしての宮沢賢治銀河鉄道の夜」もプラネタリウムを観ながら及川なずなが引用を指摘するシーンとして登場します。
ただし、同DVDで岩井俊二監督が読んだと言う、筑摩書房が徹底的に研究/考察し、ばらばらの宮沢賢治遺稿の組み替え、校正を行う以前の小説=カムパネルラの死を知りながら銀河鉄道を冒険するジョバンニのモチーフまでは、引用していません。(そこまでやったら、マニアに過ぎますよね。)
 
以上のように、新たな小説として組み替えがあります。
しかしながら、原作=実写版の物語=みずみずしいジョブナイル作品としての魅力はそのままです。
あたかも、自分自身の夏休みの一日の思い出を、なぞったような、記憶を呼び覚ます感動があります。
 
なぜでしょうか。
これこそ「岩井美学」と称される、(たとえ子どもであっても)人に対する丁寧な、描写、モチーフに対する愛情の発露なのかもしれない。と思いました。
 
小説を読んだ僕にも、かつてあった少年の日々。
夏休みの冒険は、永遠の宝物であった。と再認識しました。
 
2019年 3月24日
No. 628
と、amazonにはきれい事を書いたのですが(笑)、この小説は(思い入れがなくても)ふつうに小説として読んでおもしろいです。
原作の「打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?」は、岩井俊二の監督作品として、後年の名作の全ての要素「映像美」「役者のリアルな演技」「気合いの入った音楽(※)」が詰め込まれていて、もう、おなかいっぱいなのでビデオを見れば良いです。
(※)たとえば、映画音楽を担当したREMEDIOSのForever Friendsを解説しているまたまきもとやさんのブログ記事
麗美とその時代 Forever Friends - REMEDIOS(2)
なんか読むと、すごいよ。
REMEDIOSが全身全霊を傾けて作り出した音楽だ、と理解出来ます。
この小説は、アニメーションの新作に遠慮したのか、または新たに小説を購入する読者へのサービスか、原作の枠を超えた新たな魅力が沢山あります。
特に僕は「檸檬哀歌」からの引用部分が好き。
今僕は、上でご紹介したDVD、原作映画の六年目の検証のほうの「少年たちは花火を横から見たかった」の檸檬哀歌を、DVDで見ています。
奥菜恵山崎裕太が小学生の男女の台詞を朗読し、なんと、わざわざ深浦加奈子(1960~ 2008)を呼んで、母親役として演技をされています。大根を刻んでいるし!
で、この男の子は「典道」ではなく「基次郎」です。自分の名前の由来を説明するに、梶井基次郎の「檸檬青空文庫の心像スケッチ掌編「檸檬」にリンクを張っています。を読んだ旨、「なずな」ならぬ「智恵子」に話しています。
で、智恵子は智恵子抄の智恵子で高村光太郎智恵子抄の「レモン哀歌青空文庫の詩集「智恵子抄のレモン哀歌」にリンクを張っています。のエピソードを語ります。
脱線した(^0^;)
第三章までが「檸檬哀歌」からの引用です。なずなが母親に連れられて典道の家に泊まるエピソード。
でも、特異的に面白いのは朗読「檸檬哀歌」にもない台詞を述べる典道の母親です。
リメイクアニメでは、まだいけいけの女性としてお母さんが登場しますが、
こちら(原作)のお母さんはホントに小学生の男の子を持つお母さんです。面白いです。
そういえば、僕も小学生の時、誰か友達のうちで学校のグループ課題(経済学習の一環で各班で模擬店をだす、その商品作り)で作業していたとき、その家の子が外に用事を足しに出てしまい、初恋のクラスメイトのM子ちゃんと二人きりになってドキドキして何もできなかった一時間を思い出した。
と、言う具合に、ストレートに中高生向けに作られたリメイク・アニメーション版と違って、岩井俊二作品は、過去のドキドキを思い出して淡い想いに浸りたいおとな、ていうか俺も喜べるように工夫がしてあるな、と思いました。
2019年 4月15日