自ら失踪した松岡邦夫。彼の妻=深雪の求めに応じ、捜索を始めた松岡の旧友=村上史郎の物語。
ミステリーとしての面白さに加え、読み応えのある人物描写が印象的でした。
特に深雪の描き方が面白かったです。
乳飲み子を抱え、収入が途絶えて困窮する深雪の目論見と行動。
運命に翻弄される状態であっても、そこに選択肢は(数少ないながらも)残されています。
深雪は何を選び、どう生きていくのか。偶然に助けられながらも破滅ではなく自立していく深雪がたくましく、美しく感じられました。
2007年8月1日
No.473