受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 590 ムーミン谷の十一月/ ヤンソン 著 を読みました。

最初はトーベ=ヤンソン全集として出版されたようです。
次に文庫化され、
ムーミン谷の十一月 (1980年) (講談社文庫)

ムーミン谷の十一月 (1980年) (講談社文庫)

 
1984年10月に青い鳥文庫で出版された後、
ムーミン童話全集の第8巻として配本されたようです。
ムーミン谷の十一月 (ムーミン童話全集 8)

ムーミン谷の十一月 (ムーミン童話全集 8)

 
2011年に21世紀版文庫として、冨原眞弓の解説付きで改版/出版され、
新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

新装版 ムーミン谷の十一月 (講談社文庫)

 
青い鳥文庫も新装版として2014年に改版されました。
まっ白な雪にとざされて、長い冬眠に入る前のムーミン谷の十一月……人恋しくてムーミン家に集まってきたフィリフヨンカ、ホムサ、ヘムレン、スナフキンたち。
ところが、心をなごませてくれるはずのムーミン一家は旅に出ていて……。ヤンソンが読者に贈るファンタジックで魅力的なムーミン物語の最終巻。
  背表紙を転載  

小説ムーミンシリーズ最終巻

トーベ・ヤンソン(Tove Marika Jansson 1914/ 8/ 9 ~ 2001/ 6/27 スウェーデンフィンランド人)によるムーミンシリーズ全九冊の最後を飾る作品。原題は"Sent i november"。スウェーデン語で書かれたもので、最初に出版された「小さなトロールと大きな洪水」から四半世紀を経た1970年、ヤンソン56歳の年にフィンランドのシルト出版社(Schildts Förlags Ab)から出版されました。
ヤンソンはその後も末弟のラッセ(Lars Jansson 1926/10/ 8 ~ 2000/ 7/31)とともにコミックでムーミンシリーズを生み続けますが、小説はこの作品で終わりです。

ムーミン一家がいないムーミン谷が舞台

舞台は11月のムーミン谷。冬が訪れる直前です。例年ならば、おなかに松の葉を詰め込んで冬眠に備える時期。しかし、前作「ムーミンパパ海へ行く」でムーミン一家は船に乗って灯台のある島に引っ越しています。ムーミン谷にムーミン一家はいません。
本作は、ムーミン一家の引っ越しを知らずに、ムーミン屋敷に訪れるお客さんたちの物語です。ムーミン屋敷でムーミン一家を待ちながら、仲が良いのか悪いのか、それぞれの生活を続ける物語です。

ムーミン屋敷に集まる妖精たち

冒頭で、スナフキンが恒例の旅に出ます。
一人暮らしのフィリフヨンカの屋敷の脇を通り、
ヘムレンさん、ミムラねえさん(ちびのミイの姉)たちの集落を抜け、
ヘムレンさんのヨットの中で暮らすちびっこホムサ(ホムサ・トフト)に気が付かずに行き去り、
森の中へと入っていきます。
そして、スナフキンは作曲に精を出すものの、素敵な調べがムーミン谷に置き去りになっていることに気がつき、引き返します。
フィリフヨンカ、ヘムレンさん、ホムサ・トフトもムーミン谷のムーミン屋敷を訪ねてきます。
スクルッタおじさんが最後にやってきて、物語はスクルッタおじさんのためのパーティーを開くことに集約していきます。

ムーミンママだったらどうしただろう

みんなが「ムーミン・ママだったら、どうしただろう。」と考えながらパーティーの準備を進める様子が印象に残りました。

みんなの中のスナフキン

唯一家の外にテントを張って過ごすスナフキンの元に、喧々がくがくのお客さんたちが、一人ずつ尋ねて来る様子も面白かったです。
ムーミン谷の夏まつり」で子どもたちを世話した時のように「はやく、ムーミン・ママに任せてしまいたいな。」と思うわけにも行かず、相手をするスナフキン
ヘムレンさんが看板を書いた時に、ついに堪忍袋の緒が切れて激怒してしまいます。
「あぁ、スナフキンにも許せない事があって、怒ることもあるんだな。」
と、人と接すれば、終始穏やかなだけでは済まされない悲哀を感じました。
はやくスナフキンを独りにしてあげたい、と思いました。

素敵なエンディング

物語の最後は、ホムサ・トフト独りになったムーミン谷のムーミン屋敷。
冬眠の時期が近づいて皆が去った後、素敵なエンディングでムーミンシリーズの小説は幕を引きます。
ホムサ・トフトにムーミン屋敷を任せて再び旅に出るスナフキン。一人でムーミン一家の帰りを待つホムサ・トフト。
恒に接して世話を焼いたり、遊びに行ったりするだけではなく、離れていても信じていることで人との絆が生まれるのだ、と感じました。

2016年 6月 5日
No. 590