受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 513 夜のピクニック/恩田陸 を読みました。

夜のピクニック(新潮文庫)

夜のピクニック(新潮文庫)

 
2005年(第二回)本屋大賞を受賞した長編青春小説です。
甲田貴子と西脇融は同じ高校に通う同級生。それぞれ親しいグループで、高校生活最後のイベントとなる「歩行祭」をスタートさせます。

 

僕は、冒頭で西脇融が晴天を見上げて述べる感想が「理系っぽくないなぁ。」と批判的に読み始めたのですが、単に「大気があるから、空が青い」と言う、僕にとっては当たり前の理系高校生の感想を述べない、彼の  おそらくは、将来モテて、幸せな家庭を築くであろう当たり前の大人になる彼の  健康さに羨望を感じて読み終えることになりました。
「そうか、空を見上げて『大気が太陽光が放射する可視光のうち、短波長の青色を拡散するから、空は青いのだ。』と言うばかりが、理系高校生のリアリティーではないな。」でした。

 

この長編は、一昼夜をかけて全校生徒が80キロメートルの道程を歩き通す「歩行祭」を描写する、言ってみれば単調な(誰も死なない、誰も犯人ではない)小説ですが、ハイティーンの、人生の選択をする大人への入り口に立った、彼らから、僕が学ぶものが多い、やり直せるなら、こんな高校生として育つのも良いな。と思う一遍でした。
ただ、実際には、僕は晴天を見上げて、やっぱり「大気があるから青いのだなぁ。」と言うのだろうな、と思います。

 

冗談のような脇役男女各一人ずつの役回りも、融通が利いていて良いなぁ。と思いました。

2008年3月17日
No.513