受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 520 女子大生会計士の事件簿 DX.3 神様のゲームセンター/山田真哉著 を読みました。

同じ会計事務所に勤務する、女子大生兼公認会計士の藤原萌実と新人公認会計士補のカッキーこと柿本一麻のコンビが、クライアントの監査で出くわす事件に対応する経済ミステリー第三弾。
<映画の中の会計士たち>事件  除去とキックバックの話  
この事件で取り扱われるトリックは、前作の<幸運を呼ぶおサルさん>事件  金管理の話  で扱われていたものと同様の単純な犯罪です。この手の経済犯罪は、強盗などと違って、犯罪を実行する際に、とりあえず直接的な暴力を使わない事が特徴なのかな?と、改めて思います。実行する人がそれをそれほど気にとめて無く「みんな、やっていることだろう。」と言うようなノリで実行するようなのですが、実際には、内部でそれに気付いた人に対して、脅迫をするなどの、凶悪化を伴う場合もあるので、要注意です。このような防犯責任を「企業の内部統制」と言う事を学んだ一遍でした。
<鏡を割ったのは誰だ!>事件・前編  部門別会計と利益の話  
危機的な状況では無いけれど、経営状態が思わしくないホテルに監査に出向いてのお話。業績が良くない場合、世の中の景気などの外的要因が大きく関わりますが、外部要因に対する会社の対処の仕方は直接の影響を及ぼしますよね。僕が勤務する製造業などの場合には、解散/縮小した取引先のメーカーを振り返って「そう言えば、あの会社は、景気が悪くなるに従って、品質を落として対処していたなぁ。」とか、「設備をけちって、納期が守られなくなっていたなぁ。」と言うような事がありました。この物語はホテル業界でのお話。部門別会計を導入して、管理を厳しくする、と言う目的は一応正攻法なのでしょうが、その弊害が、ちらほら見え隠れする前編で、カッキーピンチ! と言うところまでです。
<鏡を割ったのは誰だ!>事件・後編  減損会計の話  
このお話は、次の<未来の財務諸表の作り方>事件まで続く前三話の第二話です。第二話では、親会社の腕利きが仕組んだトリックが暴かれるわけですが、つまりそれは、会計操作で一時しのぎをしようとした結果だと読者に判ります。経営者の苦労が理解できるエピソードですが、その苦労を超えて会社を良い方向に向かわせるのが経営者に求められる仕事なのだなぁ。と、つくづく、身軽なサラリーマンである自分の仕事のお気楽さ加減に安堵のため息をついた一遍でした。
<未来の財務諸表の作り方>事件  直接原価計算の話  
と、言うわけでこのシリーズ第三話では、会計操作でその場しのぎをしようとした経営者に対して、萌ちゃんが経営コンサルタントを実践! こういう考え方、施策は経営者じゃなくちゃ出来ません。現場でがんばって仕事をしている担当レベルは、こんな経営者に期待します。経営者にこんな知恵が浮かばなければ、会計士の方にがんばってもらうしかないですね。ちなみに、経営コンサルタントの仕事は、(別のブログで聞きかじったのですが(;^_^A)指南して、レポートを出して終わり。ではなく、実際の現場で実行できる人と一緒に施策を実行していく過程も入るそうです。
<天使のウィルス>事件  システム監査の話  
萌実、カッキーに続く第三のキャラクター、準レギュラーとなったDX.1「ベンチャーの王子様」の王子様=在原純平の活躍、と言うか、人間味が味わえる物語。監査が、必ずしも会計士の資格を持った者だけではなく、専門技術者によるサポートも加えて行われることの紹介を兼ねています。
<神様のゲームセンター>事件  固定資産管理の話  
不良のたまり場だったゲーセンを、健全な遊戯施設へ脱皮させ、チェーン化させた二人が経営する企業「スール ガー」への監査の物語。文学作品として充実した一遍です。「スールガー」の今川社長の企業への思い、ゲームセンターへの思い、家族への思いが描かれています。また、主人公藤原萌実がなぜ女子大生なのかも明かされます。
女子大生会計士の事件後3
解説として、一年間の仕事を振り返るカッキーと萌実。
読者からの質問コーナー
不正・粉飾決算摘発マニュアル
実際にニュースになった事件などの解説も含まれています。サラリーマン一般には、読み物としても面白い付録です。

DX.3は、テーマである企業会計のトリックと共に、カッキーの萌実に対する気の使い方なども印象に残る、文学作品としても充実した一冊でした。

著者の公式サイトはこちら。

公認会計士山田真哉工房

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おぉ、もう、DX5も出版されているんですね。

2009年7月2日
No.520