前人未到のショートショート1001編という偉業を達成した星新一。長い作家生活のなかで単行本に収録していなかった作品を集めた没後の作品集『気まぐれスターダスト』を再編集。デビュー以前の処女作「狐のためいき」など初期作品と、1001編到達後の「担当員」を収録。さらに、文庫未収録のショートショート6編を加える。「まだ読んでいなかった」作品をそろえた、愛読者必携の一冊。背表紙より
- 天国からの道
- 神様に手玉にとられた天使たちが工夫を凝らし、競争に励む物語を楽しく読みました。結末のひねりには単に笑ってばかりではいられませんでしたが。
- 禁断の実験
- 禁断の実験に手を染めたくなる心理にリアリティーが感じられ、恐怖を感じました。
- 友情
- 外国を信用する際の教訓として読めるように思います。ただし、冷静に相手を分析して対応を決めるよりも、国内の事情で正しい手を打つことが出来ない場合もありますよね。
- ある声
- 矛先が自分に向けられたミステリーでした。
- 悪夢
- 面白いお話しでした。
- けがれなき新世界
- 正義と、人に委ねることの危うさを感じました。
- 平穏
- 星新一が(どこで読んだか忘れましたが)エッセイで、自作では性を避ける旨記してように記憶しています。(他に、作品を風化させぬ工夫として「時事ネタを避ける」、インフレを考慮して「物の値段は具体的に示さぬ。」などと一緒に読んだ記憶があります。)だから、本作品は、文庫に収録していなかったのだと思います。どうして、このような性教育が必要なのか、さっぱり解らなくなった平穏が訪れた未来。性教育を子供に施す親の虚しさをクールに読めました。
- つまらぬ現実
- アイザック・アシモフ(1920 ~ 1992:米)のロボット工学三原則が、現実としてロボット以外のもので機能している事を指摘しています。納得するかどうかは読者次第。納得した場合、「星新一、すごい!」です。
- 原因不明
- おおよそ予測が付けられている病因。が、しかし。
- 「人の嘘を見抜きたい。」と言う人のポピュラーな欲求が叶い「本当のことを言わせた。」と喜んだとしても、それが真実だと確認できなければぬか喜びの可能性がある。と言う教訓になっています。
- 「本音で話そうよ。」と言う人に限って、おきまりの建前を好む傾向にあることや、「嘘は嫌!」とヒステリックに怒鳴る人に限って、よく取り繕った虚偽を喜ぶ事への皮肉になっているように思いました。
- ぼくらの時代
- アパルトヘイト政策で世界中を敵に回しながらも半世紀近く体制を維持した南アフリカ共和国は、優れた民主主義のシステムを持っていました。例えば、それぞれ別に首都を構える三権(行政府、立法府、司法府)。と言うような例を思い出しました。優秀な人が、正しく評価される社会と、みんなが幸福になる社会とは、別の問題である。という教訓になっているように思います。
- 火星航路
- 生々しい恋愛小説に慣れた僕には、逆に新鮮に感じられました。こんなふうに心を通わせて、恋を成就できたら、これ以上の人生は無い。と思いました。
- Q星人来る
- 「地球人は何が楽しくて生きているのか。」何を楽しいと感じるのかは、比較程度問題では?との提案として読みました。欲望は尽きることがありませんので、満足できるかどうかが人の幸せを満たす要件と言うことでしょうか。
- 珍しい客
- 過去の過ちは思いがけぬ時に我が身に返ってくるのですね。
- 狐のためいき
- 「作者のメモ」として、本作が作品第一作である旨が作品の後に記されています。星新一が学生時代に書いた、作品第一作。都会擦れした人間への同情が描かれています。
- 担当員
- 死の恐怖と欲望との関係の物語と理解しました。
- 収穫
- 世界に争いの種を絶やさない悪魔の正体は、宇宙生物だった。と言う物語としても読むことが出来るように思いました。しかし、それは、結局のところ自業自得ですね。
- 壺
- 「つねならぬ話」収録の「壺」とは別のお話です。本作が生前文庫に収録されなかったのは、主人公のスタルノバスの名前が言葉遊びの要素を含んでいるからなのだそうですが、ショートショートで宇宙の謎を語る秀作だと思いました。
- 大宣伝
- 新商品は、商品が優れているだけでは売れない。さりとて、宣伝が成功したとしても売れるとは限らない。諸行無常の企業運営。
- 禁断の命令
- 融通が利くと言うことは大切な事なのだな。と思いました。
- 疑惑
- 男なら誰でも持つ悩みですな。
- 解放の時代
- 日本では、麻薬について目くじらを立てて取り締まられます。タイでは外国人が頻繁に死刑にされます。寛容な国もあると聞きます。我々の感覚で公序良俗に反する行為が、我々よりも進んだ文明の星で良俗だったら?と言う意味にとりました。これも性を扱っているので、生前文庫に収録されなかったのだろうと思います。
2014年 7月13日
No. 560