受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 522 風のささやき~介護する人への13の話/姫野カオルコ 著 を読みました。

もう私のことはわからないのだけれど

もう私のことはわからないのだけれど

 

 文庫で改題しています。

 

要介護の家族を持つ十三人の独白で構成された連作掌編集。
『日経ヘルス プルミエ』(日経BP社)の連載を単行本にまとめた一冊です。
各編には独白をする人のプロフィールが示され、あたかも一般人の投書を読むような体裁になっています。この工夫により、僕は親しい人の話を聞くように読むことが出来ました。

 

読み終えて思うのは、作中でも述べられるのですが、
「実際には、聞く機会の無い話なのだろうな。」
でした。
おそらく、僕が毎日通っている職場にも、この本の語り部のような毎日を送っている人がいるのだろうと想像します。しかし、彼らは、同僚がお盆休みの計画を「スペインに行ってくるんだ。」と明るく話すのに対し「あら、良いわね。行ってらっしゃい。お土産よろしくね。」と同じく明るく返答しながら、心の中では「普段は他の家族に任せている分も盆休みは私が引き受けなくっちゃ。」と、要介護の家族と、他の家族のことを気遣った盆休みの計画を決心し、その決心は、人に話すことなく、日常を過ごしているのだろうと想像するのです。
自分が自宅で介護をしているお話は、積極的に話して盛り上がるような内容ではありませんし、理解できない人には特殊な人として敬遠されるだけがオチになるような恐怖があると思います。
ですから、僕が実生活を送っていると、この本のような独白を聞く機会は無いのだろうと想像するのです。

 

そして、僕はこの本を読んでいる間は、ただ彼らの話を聞いて、
「こういう人もいるのだ」
と、理解するのに務めました。

 

人に優しく、とは誰もが思う事だと思いますが、想像出来ない人の苦労に共感することは出来ず、優しく接することは出来ません。
この一冊は、こういう人もいるのだ。と、僕の理解を一歩進めたような気がします。
先ずは、
「お話を聞かせてくれて、ありがとう。」
これが、僕がこの一冊を読んでの感想でした。

 

以上はオンライン書店hontoネットストアamazonに投稿した書評をもとにしたものです。

2009年7月4日
No.522