受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 524 女子大生会計士の事件簿 DX.4 企業買収ラプソディー/山田真哉 著 を読みました。

同じ会計事務所に勤務する、女子大生兼公認会計士の藤原萌実と新人公認会計士補のカッキーこと柿本一麻のコンビが、クライアントの監査で出くわす事件に対応する経済ミステリー第四弾。
<逆さまバレンタイン>事件  返品・問屋の話  
萌実とカッキーは、バレンタインデイ近くにお菓子メーカー<コーリン製菓株式会社>の本社へ監査に行き、バレンタインデイ当日には先輩の大津とフィアンセ=翡翠さんの四人で勤務する事務所のスキーツアーに参加した。
大規模小売店舗法廃止200年6月以来、ますます小売店の経営は厳しいのではないかと思いますが、その対策として、この短編で萌実が一つの提案をしています。ちなみに、僕のこの問題への感想は
「既得権による商売は、その権利が無くなった場合をリスクとして想定しておくべきである」
です。高校の同級生に羽振りの良い酒屋の子どもがいましたが、彼の家は正しく酒税法上の既得権である「酒類販売業免許」に頼った羽振りの良さだったと考えています。この小説の事由の場合は、大店法の商業活動調整協議会と言う既得権の消滅です。並べてちなみに言えば、僕のようなサラリーマンは、会社の倒産、または解雇されることがリスクだと思ってます。
<渋滞とハイスクールララバイ>事件  棚卸の話  
年度末に工業団地へ棚卸の立会に向かった萌実とカッキー。会社の担当は、なんとカッキーの高校クラスメイト「沖田奏子」さん。現在工場管理責任者を務めている彼女は出世して本社のコントローラーを目指しています。
トリックを暴いた萌実と、彼女のカッキーに対する評価が瑞々しく感じられました。
<それいけ!萌ちゃん>事件  手形の話  
仕事を終えた萌実とカッキーが帰路の電車を待つホームで偶然知り合った会社経営者。
経営が苦しい町工場とその高い技術力を生かした再生の物語です。偶然に助けられながらですが、萌実は全くヒーローですね。
<企業買収ラプソディー>事件・前編  益出しの話  
先輩の紀野が、大手製薬メーカー「細川製薬」の監査予定を変更し、萌実、カッキーを引き連れ、細川製薬が十年前に買い取った子会社で、大阪証券取引所に株式を上場している「三好薬品」の監査に向かう。
三好薬品と子会社との取引がポイントになる今回の監査です。「会社は誰のものか?」と言えば、株式会社なら株主のものなのですが、本当にそれで良いの? と疑問が沸きます。特に株式の大半が親会社に握られている「子会社」の場合。ちょっと勉強しようとしました。が、難しいようです。沢山法律があり、訴訟の判例があり、単純に良い、悪いと言えないです。難しいですね。
<企業買収ラプソディー>事件・後編  企業買収の話  
後半は、「三好薬品」の子会社に対する仕打ちの善し悪しではなく、三好薬品が親会社からなされる仕打ち=解散( ・_・;)」これも、法律をいろいろ調べましたが、やっぱり難しいですね(^_^;) 法律を読むなら、まだしも理科年表読んでいる方が楽しいです(^_^)一応判ったことは、本書の注釈にも記されているとおり、株主総会で2/3の賛成で会社は解散出来ると言うことと、解散目的のTOBの実例としては、本作の目的とは異なり、解散&清算したお金にある場合が目に留まったと言うことです。例として見つけたTOBを仕掛けられた会社の経営者は「堅実に経営してきたのに」と漏らしたそうですが、それだけでは株式を公開している(誰でも株主として受け入れている)会社の経営はできないのだなぁ。と思いました。
<幸せなブラックリスト>事件  自己破産の話  
カッキーを訪ねてきた大学の先輩の用事は借金。
自己破産について良いお勉強になりました。ネットで検索した結果は、「7年程度ローンやクレジットの利用が出来なくなるだけ。気軽に相談して。」と言う司法書士のホームページがありましたが、なんだか、騙されているような気がしますので、メリットとデメリットを解説した自己破産手続き&自己破産のデメリットもご覧になりますよに。うーむ。満期解約金がある生命保険も解約して借金返済に充てなければならないのだなぁ。おぉ、破産手続き開始決定から免責許可の決定が下されるまでは、警備員も出来ないのか。へぇ、取締役は2006年施行された新会社法で辞任する必要が無くなったのか。ていうか、本の感想ではなく、お勉強の報告になってるな<俺(^◇^;)
<萌さんとメリー・クリスマス!>事件  会計士たちのちょっと変わった日常の話  
万能人間的な印象を与える萌実が実は合コンでは負け続きの実情を描写しています。男女間に限らず、会話上手な人は、「尋ねる」>「答えを聞く」>「質問をされる」>「答える」の4サイクルをテンポ良く続けるようです。しかし、テレビドラマで、もてる人は、長いセリフを一人でしゃべっていたりします。またあるいは、複数の登場人物が、ただ単にテンポ良く順繰りにワンセンテンスずつしゃべっていたり(会話になっていない)事に気付くことがあります。つまり、テレビドラマの会話は、ドラマの演出上の表現であり、実際に真似をすると、「会話が出来ない人」となってしまうと気付くことがあります。ところで、会話が上手でなくとも、仕事や、プライベートをうまくこなしていく事は出来ます。自分の弱点を認識して、それにあった仕事や、恋人を見つければ良いのです。萌実には是非ともがんばってほしいところです。
女子大生会計士の事件後4
解説として、一年間の仕事を振り返るカッキーと萌実。
読者からの質問コーナー スペシャFP.証券アナリスト中小企業診断士 直撃インタビュー
初心者のための<会計本>ガイド

DX.4は、(ここでは、会計トリックに絡む法律などのお勉強に時間を費やしてしまいましたが)事件を通して、萌実とカッキー(と、周囲の知人)のやりとりが気が利いていてい心温まる内容になっていました。

 

2009年7月27日
No.524