受動態

Daniel Yangの読書日記

No. 633 格差と民主主義 / ロバート・B・ライシュ(著) 雨宮寛、今井章子(訳) を読みました。

ロバート・ライシュ 格差と民主主義

ロバート・ライシュ 格差と民主主義

 
アメリカ国内での個人の所得格差の実態を示し、政治に悪影響を及ぼしている実態を説いた本です。
僕は今まで次のように思っていました。
「俺だって、頑張ればビル・ゲイツのように成功して高額所得を得る事だってできたのだ。」
「その努力をしなかったのだから、この程度の収入でも仕方がないのだ。」

 

この本で、述べられているのは、こうして格差社会を受け入れることが、民主主義の荒廃、社会不安、平和の破壊につながる、と言うことです。
風が吹けば桶屋が儲かる的な三段論法のようで、少し警戒感を持ちながら読みました。
しかしながら(訳が良いからだとおもうのですが)平易でわかりやすく、読みやすい一冊でした。
いろいろ納得でき、たくさん学ぶ事ができた、と思いました。

 

主に歴史的事実と、現状のからくりを解説しています。
「歴史的事実」は、比較的長い期間(百年程度)を展望しています。
アメリカが繁栄をきわめた時期は、累進課税が高く、格差が少なく、
逆に経済が停滞した時期は、経済格差が大きく、度々戦争を戦っていたことが示されています。

 

「現状のからくり」は、「お前が辞めれば、工場労働者が三百人雇えるだろう!」と言うような高額所得者が、政治に影響を与え、有利な社会の仕組みを作っている状況を示しています。

 

末尾でまとめられているところを引用します。
私たちが子どもや孫の世代に引き継ぐ財産の中で、民主主義より尊いものはほとんどないだろうし、私たちが信奉する機会均等と公正な社会に向けた努力以上に、子どもや孫の人生に影響を与える根本理念もほとんどないだろう。

 

アメリカ国内の問題を論じていますが、子どもたちに格差と紛争の不安を残したくない、と考えるならば我々日本人を含めたどの国にも共通の教訓として学ぶことが沢山ある一冊です。

 

例えば、フランスのマクロン大統領の政策は、大企業や富裕層の税率を抑えて、経済活動を活発にさせることが狙いだと思いますが、いつまでたっても景気は上向かず、中間層への社会保障負担増も緩和されません。 この本を読んだあとは「フランスの政策は失敗だ。」「もっとよい政策があるぞ」と思いました。

 

「金持ちから取り上げろ」
ではなくて、
普通に働いて家族がいる僕たちが、正当な所得を得て、税金を払い、役所が適切な予算で住みよい社会を作ってくれることが期待できるようにしましょう。
と言う主張です。

 

僕の理解は、
「大金持ちが慈善事業に寄付や投資をするならば、その額を全部税金として納めて欲しい。」
と言うことができて、その税金が(慈善事業に期待できる以上に)広く世のため、明るい未来のために使われることが期待できる社会を目指すべきだ。
というものでした。

 

実際には僕は毎日働いて、休みの日は遊びに出かける生活で、取り立てて政治に参加しようとは思いませんが、
選挙の時、誰に投票するか、など心構えだけは、改めることができました。
2019年 4月28日
No. 633
以上は、amazon本書のレビューに投稿したものですが、まだ公開されていない(あるいはボツ)なので、訂正できませんが(^_^;
今、訳者(雨宮寛と今井章子)によるあとがきを読んで、あとがきのぱくりだったことが判明しました\(・o・)/
 
この訳者のあとがきは、本書の、たいへんに良好な要約になっています。
言い訳をすると、僕が感想文を書く際は、読み終えた後、頭の中で要約をして、感想として述べるべき点を考えます。
と言うのは、ツィッターか、どなたかのブログで読んだ記事の記憶があるのですが、それは「国語の時間には、生徒に読ませた本の感想文を書かせるのではなく、要約を書かせる方が良い」との指摘が念頭にあるからなのですが
今回、上記感想文として書いたものを読んだ覚えがあったのですが、慌てて感想文を書く際に、一所懸命本文を読み返しても見つからなかったので、あたかも自分が考えたように書きました.ゴメンナサイ。
あらためて、本書の要点を述べます。次の二点です。
  1. 富裕層を「懲らしめ」、低所得層にお金を「与える」ことではなく、  中略  民主主義の機能をフル稼働できるように社会を立て直すこと(雨宮寛のあとがき)
  2. 戦前の日本の上位所得層一%の国富占有率は米国のそれとあまり変わらない。  中略  戦争景気に沸いていた時期には、国富が上位一%層に偏在していたことがわかる。(今井章子によるあとがき)
そこで、あわてて、

僕自身で考えたことを述べます。

一昨年のメーデーに参加して、政治家の話を聞いて思ったことです。
いずれも「戦争をする国にしない」とか「安心して働ける職場をつくる」など、もっともなことを述べていらっしゃいました。
気になったのは、どなたも教育問題については述べなかった点です。
僕が参加したメーデーで挨拶をした政治家は、みな教育問題を重視していないか、取り上げてお話をしたところで選挙で投票されるとは考えていないようです。

 

(そもそも先生がたが忙しすぎる問題があるようです。学校が人件費をけちっている(けちらざるをえない)からなのでは、と言う問題もあると思いますが、それ以外に)
例えば、現代の子どもは塾に通う人が多いらしいですが、みんなが塾に通う必要があるなら、タダで通えるようにする政策があってもよいですよね。
義務教育の時期の子どもたちなのですから。
また、高校もみんなが進学するようになって久しいのに、未だに義務教育ではありません。
経済的に余裕がある子どもだけが学費の高い、私立に行って、進学に役に立つのだとしたら、これを是正すべく、公立高校でも同じような教育が受けられるような政策を打ちたいですよね。
学校給食の給食費を払わない親が話題になったことがありましたが、逆に義務教育の精神に準じて(ユニセフが、貧困国で学校給食を援助している狙いなども考慮して)タダにしたって良いじゃありませんか。

 

消費税の税率引き上げに反対するのも良いですが、払った税金の使い道について積極的に声を上げることも必要ではないかと思います。
本書を読んで格差を是正するために「民主主義を取り戻す」必要がある、と言うことは、こういうことだ、と励まされた気分になりました。
2019年 4月28日